火とぼし山

[童話]火とぼし山


第三章  湖の上を歩く娘 2


「娘か。こんな寒い夜、あの娘はどこへ行くのだろう」
娘のことが気になった明神さまは、そっと娘の後をつ
けました。
「みしっ」
「ばりっばりっ」
「ぱり」
娘が歩くたびに、氷の割れる音がします。


「あぶない」
「そっちへ行ってはだめ」
明神さまは、はらはらしながら、娘の後をついていき
ました。
「娘よ。なぜ氷の上を歩くのじゃ。湖の氷は、まだ薄
い。湖に落ちれば、死んでしまうぞ。このわしでさえ、
今夜初めて氷の上を歩いたのじゃ。おまえは、ほん
とにむてっぽうな娘じゃのぅ」
明神さんは、心の中で娘に話しかけました。


             つづく