[童話]瑠璃寺の青獅子
瑠璃寺の青獅子 28
今まで、わしのことを気づいてくれた人は、誰もいな
かった。だから、わしは二度と外へでることはできな
いとあきらめておったのじゃ。でも、おまえが気づい
てくれた。どんなにうれしかったか。仏師よ、おまえ
はすばらしい仏師じゃ。
わしは、おまえの志をついで、伊那谷の人々をしっ
かり守っていこうと思う。仏師よ、ほんとうにありがとう。
心やすらかに眠っておくれ。今度は、わしがおまえ
を守る番じゃ」
つづく
瑠璃寺の青獅子 27
和尚がはっと我にかえると、雷雨はやみ、空には太
陽がでていました。
「ああ、こわかった。こんなこわい思いをしたのは、初
めてじゃ。わしは、悪い夢をみていたのだろうか。い
や、夢ではない。わしは、たしかに青い獅子をみた。
うおーっとさけぶ不気味な獅子の声も聞いた。夢で
ない証拠に、着物がびっしょりじゃ」
雨でぬれた着物をみて、和尚がつぶやきました。
和尚は、滝つぼへおりて行きました。
すると・・・。
どこからかおごそかな声が聞こえてきました。
「仏師よ。おまえのおかげで、わしは何百年もの長
い眠りからさめることができた。ありがとう。 ある日、
わしは、桐の木にとじこめられてしまったのじゃ。
つづく