2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 48 校長先生と桜の鈴 6 みごとに咲いた桜の花の下で、「この鈴を大切 にするのだよ」といって、娘に鈴をわたしてい る光景が浮かんできたのです。 それだけではありません。 娘とすごした鎌倉の様子が、走馬灯のように頭 の…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 47 校長先生と桜の鈴 5 「私はどこかでこの鈴の音を聞いたことがある。 どこで聞いたのだろうか?」 しかし、どこで聞いたのか、校長先生には思い 出せませんでした。 「リーン・リーン・コロンころん」 「リーン・リーン・…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 46 校長先生と桜の鈴 4 かなは、おとうさんから聞いた小桜姫の話を、校 長先生に話しました。 校長先生はその話を知っていましたが、「ほうー」 「それで」「それからどうしたの」といいながら、 かなのたどたどしい話を、最…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 45 校長先生と桜の鈴 3 すると、目の前の木に、うぐいすがとまって います。 「ホーホケキョ、ホーホケキョ」 かなが近づいても、うぐいすはにげません。 うぐいすは、かなを案内するかのように、か なの前をとんでいきます…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 44 校長先生と桜の鈴 2 かなは校長先生の「おはよう」という声を聞く と、心の中がぱっと明るくなるような気がしま した。 校長先生は、まわりにいる人々を、元気にして しまうふしぎな人でした。 五月初めの日曜日。 かなは…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 43 校長先生と桜の鈴 1 それから何カ月か過ぎました。 かなは一年生になりました。 かなの小学校へ、長いひげの校長先生がふにん してきました。 小柄な色黒の先生でした。 先生のひとみは温かく、いつもきらきらと輝い てい…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 42 朝顔のエスカレーター 13 はるかむこうに、小高い丘がみえました。 丘の上で、誰かが手をふっています。 かなは丘にむかって、広い野原をどんどん 走りました。 「おとうさんではないだろうか」 丘の上で手をふっていた…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 41 朝顔のエスカレーター 12 朝顔のエスカレーターは、途中止まることなく、 空にむかってどんどんのぼっていきます。 「かなさん、つきましたよ」 その声で、かなははっとわれにかえりました。 ついた所は、広い野原のまん…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 40 朝顔のエスカレーター 11 「かなさん、私の体にしっかりつかまりなさ い。これから良い所へ案内しますから」 どこからか、また声が聞こえてきました。 かなは、おそるおそる朝顔のつるにつかまり ました。 すると、どう…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 39 朝顔のエスカレーター 10 つるも空にむかってどんどんのびていきます。 つぼみも数えきれないくらい、たくさんつき ました。 そして、あちらにひとつ、こちらにひとつと、 花が咲き出しました。 赤い花も白い花もありま…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 38 朝顔のエスカレーター 9 「かなさん、おねがい。雪の上に、朝顔の種を おいてくださいな」 また声が聞こえました。 かなは外へでて、いわれたように雪の上に種を おきました。 すると…。 種がわれて、中からかわいい黄緑…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 37 朝顔のエスカレーター 8 かなは机の奥から黒い種をだし、そっと手に のせました。 すると…。 「リーン、リーン、コロンころん」 「リーン、リーン、コロンころん」 どこからか鈴の音が聞こえてきました。 「かなさん、元…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 36 朝顔のエスカレーター 7 「かな、みてごらん。朝顔の芽がでてきたよ。 かわいいだろ」 「かな、つるがのびてきたよ」 「ほら、みてごらん。つぼみが三つもついた よ。もうすぐ花が咲くよ。楽しみだね」 朝顔の花をみてい…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 35 朝顔のエスカレーター 6 それはあっという間の出来事でした。 「黄金色の鳥は、あちらの国っていったけれ ど、あちらの国ってどこにあるのかしら?」 かなは「あちらの国」ということばが、気に なりました。 次の朝、か…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 34 朝顔のエスカレーター 5 まっくらな部屋の中で、柱時計の上だけが、 明るくきらきらと輝いています。 よく見ると、黄金色の鳥が、柱時計の上に とまっています。 見たことのない、美しい鳥でした。 「かなさん、私は遠い…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 33 朝顔のエスカレーター 4 おとうさんと沼へおにやんまや銀やんまをとり にいったこと、庭できあげはや黒あげはをとっ たことが、まるで昨日のことのように、なつか しく思い出されました。 「やさしいとうちゃんだった。私…

ふしぎな鈴

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 32 朝顔のエスカレーター 3 「とうちゃん、とうちゃん。目をあけて。ねえ、 とうちゃん、おきて…」 かなはおとうさんの体にしがみつき、体をゆす りました。 さっきまで元気でいたおとうさんが、急になく なってしまうなんて…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 31 朝顔のエスカレーター 2 「この鈴はね、鎌倉の和尚さんからいただいた 鈴だよ。この春、丘へ桜を見に行った時、小桜 姫の話をしてあげたね。おぼえているかな? この鈴は、小桜姫が大切にしていた鈴の一つだ よ。小桜姫は…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 30 朝顔のエスカレーター 1 それから一年後。 残暑の厳しい九月五日のことでした。 大好きなおとうさんが、心臓病で急になくなっ てしまいました。 しんきんこうそくでした。 「かな、おじいちゃんとおばあちゃんに、かわ い…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 29 じいちゃんとばあちゃん 5 かなが五才の時。 おじいさんが病気でなくなりました。 脳こうそくでした。 かなは、人の死に初めてであいました。 温かだったおじいさんの体が、氷のように冷 たくなっていくのが信じられませ…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 28 じいちゃんとばあちゃん 4 小さく縮れていたせみの羽が、時間がたつに つれ、だんだんにのびてきます。 体の色も、うすい茶色に変わってきました。 そして最後には、こい茶色になりました。 二人は、羽が完全にのびきるま…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 27 じいちゃんとばあちゃん 3 「わぁー。たくさんいる。じいちゃん、これが せみの幼虫なの?」 「そうだよ。よくみていてごらん。もうすぐせ みが生まれるから」 「じいちゃん、このせみなんていうの?」 「あぶらぜみだよ…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 26 じいちゃんとばあちゃん 2 かなは、丘の上にたっているおじいさんの 家が大好きでした。 おじいさんの家では、蚕をたくさんかって います。 蚕室(まゆをとるために蚕を飼う部屋)へい くと、蚕のにおいがぷーんとします…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 25 じいちゃんとばあちゃん 1 かなはよちよち歩きの頃から、遠くに住んで いるおじいさんの家へ、遊びに行きました。 「かなや、かなや」 おじいさんとおばあさんは、初まごのかなを、 かわいがってくれます。 「じいちゃん…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 24 かな生まれる 3 「ピーヒョロロ、ピーヒョロロ」 晴れた日には、とびが良い声で鳴きながら、 上空をまっています。 おとうさんは小鳥や花が大好きでした。 「かな、きてごらん。まゆみの木に”おな が”がきているよ」 庭へ…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 23 かな生まれる 2 かなの庭には、南天・梅もどき・まゆみなど、 実のなる木がたくさん植えてあります。 その木へ、いろいろな小鳥がたくさんやって きます。 「ホーホケキョ、ホーホケキョ」 四月になると、うぐいすがやっ…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 22 かな生まれる 1 小桜姫がなくなってから、五百年近い月日がた ちました。 南アルプスの山々が美しくみえる町に、女の子 が生まれました。 かなが生まれた時、丘の上の桜が、とても美し く咲いていたそうです。 かなは、お…

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[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 21 小桜姫とふしぎな鈴 19 大切な鈴をあずけ安心したのか、姫はしばらく して静かになくなりました。 「心のやさしいおくがたさまだったのに、なん でこんなに早くなくなってしまったのだろう」 藩の人々は、なげき悲しみま…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 20 小桜姫とふしぎな鈴 18 「かな、この鈴を大切にするのだよ」 長いひげの人は、その少女を“かな”とよんで います。 「私はかなという少女に生まれ変わるのかも しれない」 姫は、なぜかそう思いました。 「数百年後、山深…