2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 11 「かあちゃん、なにかお手伝いすること ない?」 福は家の手伝いも、よくやりました。 「福ちゃん、あそぼ」 近所のこどもたちも、おおぜい遊びにき ます。 やしきの広い庭は、いつも近所のこども たちで…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 10 「ほら、みて。福が笑っているわ。かわいい 笑顔ね」 「福がね、はいはいできるようになったのよ」 「つかまりたちができるようになったわ」 「福が歩けるようになったの。ほら、みて。 上手に歩けるでし…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 9 「この子に、たくさんの福が授かりますように」 長者は女の子に、「福」となづけました。 「長者さまに、かわいい女の子が授かったそう だよ」 「だんなさまも奥様も、どんなにうれしいこと か。本当によか…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 8 「なんて清らかな目をしているのでしょう。 だんなさま、この子を我が家で育ててあげ ましょうよ」 「そうだのぅ。明神さまがわしらにこの子 を授けてくれたのかもしれんのぅ」 長者夫婦は、女の子をわが子…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 7 かわいいこどもを捨てるなんて、こどもの授 からない夫婦には、考えられないことでした。 「それにしても、かわいい子じゃのぅ」 長者はなれない手つきで、そっと女の子をだ きあげました。 女の子は長者の…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 6 女の子のおかあさんが、お守りのつもりで、 鈴をおいていったのでしょうか。 長者が袋をあけてみると、中には黄金色の 鈴が入っていました。 「おや?鈴に紋がついている。この紋はた しか・・梶の紋。梶の…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 5 「何?赤ちゃんが捨てられていると・・・」 「はい、赤ちゃんが捨てられています」 長者と妻は、門の方へ走って行きました。 門のそばには、桃色の布で包まれた赤ちゃん が、捨てられていました。 白い産着…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 4 二十年が過ぎました。 二人とも、四十すぎになりました。 「もう年だから、こどもは無理ね」 「こどものことを、毎日お願いしている のに、なぜ明神さまは、わしらの願いを 聞いてくれないのじゃろ」 二人は…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 3 「わしらにも、元気なこどもがほしいのぅ」 こどもたちをみるたびに、二人はそう思い ます。 「だんなさまも奥さまも、あんなにこども が好きなのに、なぜこどもが授からないの じゃろ。早くこどもが授かる…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 2 長者夫婦は、人がうらやむほど、仲の良い 夫婦でした。 しかし、なぜかこどもが授かりません。 「明神さま、どうかわしらに、元気なこど もをお授けください」 そういって、二人は明神さまに朝晩お願い して…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 1 諏訪湖の近くに、守屋山という山があります。 「守屋山には、明神さまが住んでおられる」 といわれています。 守屋山のふもとに、朝日長者とよばれる、大 きなやしきがありました。 長者は、宝がいっぱいつ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 35 これからは、娘とともに諏訪湖に住み、この地方 の人々を、しっかり守っておくれ。三郎、頼むぞー」 どこからかおごそかな声が聞こえてきました。 竜神になった三郎は、今も諏訪湖の奥深くに住み、 妻と二人で…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 34 三郎を諏訪湖で失った妻は、悲しみのあまり 諏訪湖に入り、なくなりました。 そして、竜になり、諏訪湖の底で、さびしく くらしていたのです。 「おっかあ、もうお前をはなさないぞー」 「三郎さん、私ずっと…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 33 気がつくと、三郎は竜になっていました。 「はぁっ、はっ」 三郎は大きなあらい息をはくと、大空にまい あがりました。 竜になった三郎は、あっという間に諏訪湖に 着きました。 「三郎さーん、ここよー」 湖…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 32 でも、何の返事もありません。 三郎は何度も何度もさけびました。 すると・・・。 気のせいでしょうか。 「三郎さーん、三郎さーん」 妻のやさしい声が、聞こえたような気がしま した。 「おっかあ、おっかあ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 31 「アッハハ、アハハ」 兄たちの家から、笑い声が聞こえてきました。 「兄たちは幸せに暮らしているのだな」 三郎は、笑い声を聞いて、安心しました。 「もしかして、おっかあは諏訪湖へ行ったの かもしれない…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 30 「おかしいな、どうしたのだろう」 家の中へ入った三郎は、驚きました。 家の中は、くもの巣だらけでした。 「おっかあはどこへ行ってしまったのだろう」 三郎は心配になりました。 三郎は、兄たちの家へも行…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 29 「せっかく村に戻ってくることができたのに・・・。 なぜだ。こんな姿でおっかあに会ったら、お っかあはびっくりして、腰をぬかしてしまう だろう。でも・・・、おっかあにひとめ会い たい」 三郎は、ずるず…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 28 地の国をでてから、千日が過ぎました。 「おっ、かすかに光がみえるぞ。とう とう村へついたぞー」 三郎は、大声でさけびました。 穴からでると、目の前には、なつかし いたてしな山がみえました。 「やっと村…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 27 三郎は地の国の人々にもお礼をいうと、 自分の村めざして歩き続けました。 しかし、なかなか地上へでることがで きません。 三郎は、妻に会いたい一心で、休むこ となく毎日歩き続けました。 「この道をまっす…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 26 「おまえがこの国へきてから、十年がすぎ た。いいだろう。おまえの願いを、かなえ てあげよう。この道をまっすぐ行けば、お まえが住んでいた村の近くにでるだろう。 妻に会ったら、またこの国へもどってくる…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 25 しかし、三郎は帰ってきません。 一日たち、二日たち、三日たっても、三郎 は帰ってきませんでした。 「三郎さんはどうしたのかしら」 三郎のことが心配で、妻はいてもたっても いられません。 妻は諏訪湖へ行…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 24 しかし、三郎は毎日妻のことばかり考えて いました。 「早く家に帰りたい。おっかあはどんなに 心配しているだろう」 そう思うと、三郎はいてもたってもいられ ません。 「どうか妻に会わせてください」 三郎…

竜神になった三朗

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 23 地の国では、今までみたこともない美しい花が、 たくさん咲いていました。 その花のまわりを、赤・黄・紫・白など、たく さんのちょうが、ひらひらと舞っています。 木の枝では、色あざやかな小鳥が、チィチィ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 22 「おまえは本当に不思議な男じゃのぅ。そうだ、 おまえを地の国の王子に迎えよう」 「えっ、私が地の国の王子ですって?」 「そうじゃ。人を少しも疑うことを知らないおま えを、この国の王子にしてあげよう。…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 21 「わしは地の国の神じゃ。本当にひどい目に あったのぅ。しかし、おまえはあんなひどい 目にあっても、兄たちを少しもにくんでおら ぬ。なぜじゃ。なぜお前は、兄たちをにくま ないのじゃ」 神様は、三郎にた…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 20 しかし、広い湖には誰もいません。 泳ぎのうまい三郎でしたが、落ちた所が強く うずをまいている所だったのでたまりません。 もがけばもがくほど、三郎の体は、ずるずるー と、うずの中にすいこまれてしまうの…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 19 しかし・・・。 兄たちはさっさと舟をこぎ、三郎をみすてて いってしまいます。 「なぜだ」 あんなにかわいがってくれた兄たちが、なぜ こんなひどいことをするのか、三郎にはわか りませんでした。 三郎の頭…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 18 三郎はひっしで舟をこいできたので、うでが 疲れていました。 「あーあ」 三郎がせのびをしようとたちあがった時、兄 たちは「それ、今だ」と、目くばせしました。 「えいっ」 兄たちは、三郎を後から力いっぱ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 17 数時間後、三人はやっと諏訪湖につきました。 三人は小さな舟にのり、湖の真ん中めざして すすみます。 湖はようやく氷がとけはじめたばかりでした。 春の日をあび、湖はきらっきらっと輝いてい ます。 三郎は…