2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 15 「三郎は魚をとることが大好きだしな。魚 つりといえば、三郎もけいかいしまい。こ れは良い考えかもしれんな」 次郎も賛成しました。 ついに二人は、悪魔のような恐ろしいこと を考えついたのです。 次の日曜…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 14 「それもそうだな。ほかに何か良い考えは ねえかな」 二人は、会うたびに、三郎を困らせようと 相談しました。 そんなある日。 「諏訪湖の真ん中あたりに、うずをまいて いる深い場所があると、年寄りから聞い…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 13 山深い村にも、ようやくあたたかな春が やってきました。 太郎と次郎は、今日もこそこそと、悪い 相談をしています。 「次郎や、たてしな山の奥に、人穴があ るそうだ。その穴へ落ちると、二度と戻 ってこられ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 12 二人は、三郎がうらやましくてしかたが ありません。 なんとかして、幸せいっぱいの三郎を困 らせてやろうと、二人は相談しました。 人がうらやむほど、仲のよい兄弟だった のに、どうしたのでしょうか。 「ど…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 11 「三郎さはいいのぅ。美人で、やさしくて、 その上働き者の嫁をもらって。おらの息子 も、あんな良い嫁をもらってくれたら、ど んなにうれしいだろう」 そういって、村の人々は、三郎の嫁をほめ ました。 素敵…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 10 「三郎さん、ご苦労さま。疲れたでしょ」 仕事から帰ると、妻はやさしく三郎を迎えて くれます。 三郎は妻の笑顔をみると、一日の疲れがふき とぶような気がしました。 三郎の妻は、姿が美しいだけでなく、心…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 9 三郎の心の中は、諏訪湖のほとりで会った 美しい娘のことで、いっぱいだったのです。 その夜、三郎はなかなかねつくことができ ませんでした。 その後、二人は、諏訪湖のほとりで、何度 か会いました。 そして、…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 8 二人とも初めて会ったのに、いつかどこかで 会ったことがあるような、とてもなつかしい 気がしました。 「一週間後、もう一度ここであおう」 そう約束して、二人は別れました。 その日、 三郎は軽い足取りで、家…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 7 一方、娘の方も、「なんてりりしいかたかしら。 こんな人の妻になれたら、どんなにうれしいこ とか」と思ったのです。 ひとめみた時から、二人とも忘れられなくなっ てしまったのです。 「家はどこ?」 「この近…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 6 三郎がぼんやり湖をながめていると、 「何をみていらっしゃるの」 後でかわいい声がしました。 三郎が後をふりむくと、はっとするほど美し い娘が立っていました。 真っ黒な長いかみ・色白な顔・赤いくちびる・ …

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 5 「だめよ。おらがなるんだから」 村の娘たちは、三郎が大好きでした。 三郎は、年寄りからも「三郎さ、三郎さ」と、 たよりにされていました。 ななかまどの実が橙色になった、秋のある日。 三郎は、遠くの町へ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 4 「三郎―、でけえまつたけをみつけたぞー。 早くこっちへこーい」 太郎と次郎は、山の幸をとることが、とて も上手でした。 三郎も兄たちに教えてもらい、山の幸をと ることが楽しみになりました。 十数年が過ぎ…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 3 「三郎、たらの芽だ。とげがあるから、気を つけろ」 兄たちは、春の山の幸を、三郎に教えてくれ ます。 秋になると、三人は、山へ栗やきのこなどを とりに行きます。 「でけえ栗が落ちているぞー。三郎、こっち…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 2 兄たちは「三郎や、三郎や」といって、三郎を かわいがってくれます。 三郎も、兄たちが大好きでした。 「あそこの兄弟は、ほんとに仲がいいのぅ」 「おらのとこは、朝からけんかばっかり。どう して仲良くでき…

竜神になった三郎

[童話]竜神になった三郎 竜神になった三郎 1 たてしな山のふもとに、小さな村がありました。 あっちをむいても、こっちをむいても、山・ やま・山。 さるやりす、かもしかや熊も住んでいる、山 深い村でした。 その村に、太郎・次郎・三郎という、三人の 男…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 11 「兄ちゃんはきっとよくなる。兄ちゃんは きっと優しい人になれる」 少女は何年ぶりかの兄の笑顔をみてそう思 いました。 重かった少女の心は、兄の笑顔をみて、少 し軽くなりました。 そ…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 10 春になると、おおぜいの人が黄金色の花を さがしにやってくるが、誰の目にも見えな いのじゃ。明日兄にも黄金色の花をみせて おやり。一本くらいは兄にも見えるだろう から…。兄も今度こ…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 9 するとまた声が聞こえました。 「少女よ、長い間、本当によくがんばっ たのー。目の前の黄金色の花は、おまえ が咲かせた花じゃ。兄を思うやさしいし い気持が、この黄金色の花になったのじ…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 8 どのくらい歩いたのでしょうか。 ふもとのひあたりの良い場所についた時、 少女はあっと驚きの声をあげました。 何百年もの間、おおぜいの人が探しても みつけることができなかった黄金色の…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 7 あちこち歩きまわり疲れた少女は、枯葉の上 に腰をおろしました。 そしていつの間にかねむってしまったのです。 「少女よ、少女よ。目をさますのじゃ。こん な所でねていると、かぜをひくぞ…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 6 少女は守屋山にむかって、足早に歩いて行き ました。 守屋山についた少女は、山の中をあてもなく 歩きまわりました。 黄金色の花といっても、どんな形をしている のか、どのくらいの大きさ…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 5 「少女よ、これくらいの苦しみや悲しみに 負けるなよ。おまえのことはこのわしがし っかり守ってやるぞ」 明神さまは少女の顔をみるたびに、心の中 でそうつぶやくのでした。 それから三年…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 4 そんな兄に少女はどう接したら良いのかわか らず、ただおろおろするばかりでした。 心のやさしい少女でしたが、そんなことがた び重なると、兄をうとましく思うこともあり ました。 「私は…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 3 「わしは守屋山に住んでいる明神じゃ。おまえ はなんて心のやさしい少女なのじゃ。おまえが 毎日ここへお参りにきていることは、よーく知 っているぞ。もう千回もここにきたのじゃな。 いろ…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 2 「兄ちゃんが一日も早くよくなりますように。 昔のやさしい兄ちゃんになれますように…」 少女は明神さまに、毎日兄のことをお願いし ていたのです。 しかし兄は少しもよくなりませんでした…

守屋山に黄金色の花が咲いた

[童話]守屋山に黄金色の花が咲いた 守屋山に黄金色の花が咲いた 1 明神さまが住んでおられる守屋山には、雪 がとけるころ、黄金色の花が咲くというい いつたえがありました。 黄金色の花をみた人は、一生幸せに暮らせ るそうです。 春になると、おおぜいの…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 16 雪もやみました。 澄みきった空には、大きな黄金色の月が顔 をだしました。 星もきらきらとかがやいています。 「雪んこたちよ、楽しい舞をありがとう」 人間たちが口々にさけんでいます。 るみは仲良しの友だちとしっかり手をつな ぎ…

雪んこの舞

[童話]雪んこの舞 15 夕方、空の国から応援にかけつけたおおぜい の雪んこで、長野の町は真っ白になりました。 まわりの山も家も道も真っ白です。 るみたち雪んこは、まだ楽しそうにおどって います。 雪んこの舞をみていたおおぜいの人間たちも、 一緒に…