2021-01-01から1年間の記事一覧

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 8 八十神たちは、八上比売のやしきにつきました。 八十神たちは、かわるがわる「私のお嫁さんになってくだ さい」と、求婚しました。 ところが・・・八上比売は、 「私は、あなたたちの妻にはなりません。私は、あの大き…

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 7 そういうと、うさぎは「うわーん、わーん。痛いよ、痛いよー」 と、大声でなきだしました。 うさぎの話を聞いた大国主命は、かわいそうに思いました。 「川口へ行き、真水で体をよく洗いなさい。そして、蒲の穂 をたく…

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 6 「やーい、やい。まぬけな鰐め。うまくだまされたな。 わしは、ただ本土へ渡りたかっただけだ」と。 すると、最後に並んでいた鰐が怒って、いきなりわし をつかまえました。 そして、毛をはいでしまったのです。 痛く…

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 5 「おまえとわしの仲間、どちらが多いか、比べてみよ うじゃないか。あの気多の岬まで、一列に並んでごら ん。そうすれば、わしが数を数えてやるから」 鰐にそういったのです。 鰐たちはすっかりだまされて、海の上にず…

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 4 ところが・・・。 海の水がかわくにつれ、体中の皮がひきつり、びりび りさけました。 うさぎは、ひりひりする痛みにたえかね、「痛いよ、痛 いよー」とないています。 そこへ通りかかったのが、大国主命。 「うさぎよ…

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 3 八十神たちが、稲羽の気多(けた)海岸を通りかかる と、毛のない赤はだかのうさぎが、地べたにころがり 苦しんでいました。 それをみた八十神たちは、 「うさぎよ。毛をはやしたければ、海の水につかり、高 い山の上…

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 2 ある日。 八十神たちは、稲羽(いなば)の国に、八上比売(や かみひめ)という美しい女性がいると聞き、求婚する ため稲羽の国へでかけました。 「わしらの荷物を持って、後からついてこい」 八十神たちは、大国主命…

大国主命

[童話]大国主命 稲羽のしろうさぎ 1 大国主命(おおくにぬしのみこと)には、八十神と いって、おおぜいの兄弟がいました。 大国主命は、天之冬布(あめのふゆきぬ)と刺国 若比売(さしくにわかひめ)の末っ子でした。 大国主命には、他に四つの名前があ…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 27 後に、玉依比売と鵜葺草葺不合命は、結婚しました。 そして、四人のこどもが生まれました。 そのこどもの一人が、初代天皇になった神倭伊波礼 毘古(のちの神武天皇)でした。 山彦は、高千穂の宮に住み、五百八十才でなくな…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 26 豊玉比売は、山彦がのぞき見したことは許せなか ったけれど、山彦のことは大好きだったのです。 山彦のことを忘れることができない豊玉比売は、 玉依比売に歌をことづけました。 赤玉は緒さえ光れど白玉の 君が装ひし貴くあ…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 25 豊玉比売は、山彦がのぞき見したことを知り、恥 ずかしく思いました。 「私は、毎日、海の道を通り行き来をしようと思 っていました。それなのに、あなたは・・・。私の 姿を見てしまいました。残念です」 豊玉比売は、生ん…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 24 「海の国では、こどもを生む時、変わった姿で こどもを生みます。私も楽な姿でこどもを生み たいと思います。だから、絶対に中をのぞかな いでくださいね」 豊玉比売は、山彦にお願いしました。 「変わった姿って、どんな姿…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 23 しばらくして、豊玉比売が、山彦の所へやって きました。 「私のお腹には、山彦さまのこどもがおります。 天の神の御子を、海原で生むわけにはいきま せん。だから、ここへやってきました」 「そうか、赤ちゃんができたのか…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 22 山彦は、海彦が攻めてくるたびに、塩満珠を使い 海彦を困らせたのです。 「山彦。これまでのことを許してほしい。わしが 悪かった。これからは、全力でおまえを守ってい く。おまえの家来にしてほしい」 海彦がいいました。 …

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 21 その後。 海彦は、田に水がこないので、米がとれなくなり だんだんに貧しくなっていきました。 そして、山彦をねたみ、攻めてくるようになりま した。 山彦は海彦がやってくると、塩満珠をとりだし海 彦をおぼれさせます。 …

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 20 「兄さん。ただいま」 「山彦、どこへ行っていたのだ」 「兄さんのつり針を探していました。やっとつり針が みつかりました」 「ほんとうか」 「はい」 「兄さん。つり針を返すので、後を向いてください」 「なぜ後を向くの…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 19 その鰐は、約束通り、一日で山彦を地上の国へ送りま した。 鰐が帰ろうとした時、山彦は身につけていた紐つきの 懐剣をほどき、鰐の背中に結びつけました。 「鰐よ、ありがとう。気をつけて帰るのだよ」 山彦は鰐の姿が見え…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 18 海の神は、すべての鰐を集め聞きました。 「山彦が、地上の国へ帰るそうじゃ。鰐たちよ、何日で 山彦を送り帰ってくることができるかな」 すると。 「わしは、十日」 「わしは、五日」 鰐たちが口々にいいました。 「わしは…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 17 そして、続けていいました。 「兄が高い所へ田を作ったら、そなたは低い所に田 を作りなさい。海の神のわしが水を支配しているの で、兄は三年の間に収穫がなくなり貧しくなるだろう。 そのことを恨んで兄が攻めてきたら、こ…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 16 海の神が鯛の喉を調べると、大きなつり針がささっ ていました。 すぐにつり針を取り出し、きれいに洗い清めました。 「山彦よ。探している針は、これかな」 「はい。その針です」 「このつり針を、兄に返す時、こういいなさ…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 15 海の神は、山彦に聞きました。 「昨晩大きなため息をついていたと、娘が心配して います。何か心配ごとでもあるのか」 「私は、なくしてしまった兄のつり針を探しに、ここ へやってきました」 山彦は、兄と道具の取り換えを…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 14 「兄のつり針の件で、豊玉比売に相談しようとここ へ来たのに、そのことをすっかり忘れてしまってい た」と。 山彦のため息を聞いた豊玉比売は、どうしたのだろ うと心配しました。 豊玉比売は、父に相談しました。 「父上。…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 13 「どうぞ、ここへお座りください」 海の神は、その敷物の上に、山彦を座らせました。 そして、いろいろな海の幸を並べ、山彦に御馳走しま した。 「山彦さま。娘の豊玉比売をもらっていただけないだ ろうか」 海の神は、たく…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 12 豊玉比売は、父の海の神に知らせました。 「父上、宮殿の入口にすてきな青年がきております」 「どなたかな」 海の神は、外に出て確かめました。 「あのかたは、瓊瓊杵尊さまの御子・山彦さまじゃ」 「瓊瓊杵尊さま?」 「瓊…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 11 「はい。桂の木の上に、立派な青年がおります。海の 神のような、高貴な感じのかたです。そのかたが水を 求めたので、水をさしあげました。でも、そのかたは水 を飲まずに、玉を瓶にはきいれたのです。玉をとろう としました…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 10 「水を一杯いただきたいのですが」 山彦は、侍女にお願いしました。 「どうぞ」 侍女は水をくみ、山彦にさしだしました。 山彦は水を飲まずに、首にかけていた玉飾りをほど くと、口に玉をふくみ瓶にはきいれました。 すると…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 9 しばらく行くと、大きな宮殿がみえてきました。 「あれが、海の神様の宮殿にちがいない」 山彦は、ほっとしました。 宮殿についた山彦は、桂の木を探しその木に登り、 海の神様の娘がやってくるのをじっと待ちました。 二時間…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 8 「海の神様じゃ。宮殿の入口に、大きな井戸がある。 そのそばに、桂の木があるので、木に登って待って いるがいい。そうすれば、海の神様の娘がそなたを みつけてくれるだろう。そして、相談にのってくれる だろう」 「ありが…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 7 「そうか。そんなことで悩んでいたのか。わしにいい考 えがある」 「ほんとうですか」 塩椎神は、細かく編んだ竹の籠で、舟を作ってくれま した。 「さあ、この舟に乗りなさい。わしが舟を押すから、しば らくそのまままっすぐ…

海彦山彦

[童話]海彦山彦 海彦山彦 6 そんなある日。 山彦はまた海へ行き、ぼんやり海をながめていました。 「兄さんは、なぜ大事な剣で作ったつり針を、受け取 ってくれないのだろう。つり針をなくしたことは悪いけ れど、かわりのつり針を受け取ってくれてもいい…