2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 9 犬坊には、両親がいません。 遠縁の農家にひきとられ大きくなりました。 犬坊は、城一番のやりと弓の名人。 三年前、城にやってきました。 城主の盛永に気にいられ、盛永の身のまわりの世話 をしています。 「犬坊」 「…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 8 「犬坊」 「犬坊はどこじゃ」 盛永は、小姓の犬坊をよびました。 「殿様。何かご用でしょうか」 「犬坊、ここへおすわり」 盛永は、自分の横に、犬坊を座らせました。 「犬坊は、いいのぅ。殿様に気にいられて。ほんとう…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 7 「どちらがほんとうの盛永さまなのかしら。城主だった ら、まず領民のことを考えてほしい」 お万は、心の中でそっとつぶやきました。 そして、「盛永さまが、領民のことを考えられるやさし い人になれますように」と祈り…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 6 奥がたは、お万。 心のやさしい、美しい人でした。 お万は、盛永のうわさを聞くたびに、領民や家臣た ちに心の中でわびていました。 「城主になる前は、やさしい人だったのに。城主に なったとたん、人が変わってしまっ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 5 家臣の中にも、おごりたかぶっている盛永に、不満を もっているものが大勢いました。 中には、吉岡城の下条時氏に通じていたものもいた ようです。 盛永は、鹿狩りが大好きでした。 ひまがあると、弓や鉄砲を持って山へ…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 4 「城なんか、一つあればいい。なぜ三つも城を作る のじゃ。そんな金があったら、年貢を安くしてほしい」 「石を運ぶ仕事は、もうたくさんじゃ」 「殿様は、わしらをなんと思っているのだろう。働く道 具とでも思っている…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 3 「こんなに年貢が高くては、暮らしていけない」 「嫁とりにまで、税をかけるなんて。これでは、結婚 もできない」 領民たちは、口々になげきました。 「みなのもの、新しい城をつくるぞ」 盛永は、五年間に、三つも城を…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 2 関と隣の城・下条との対立は激しく、数十年にわた り、何度も戦がくりかえされました。 そして、大下条周辺の十八ケ村が、権現城の領地 になりました。 しかし、高地が多く、農作物の収穫はあまり期待で きません。 城が…

赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花 赤い夕顔の花 1 信州の最南端に、「権現城」という城がありました。 関氏の城で、「和知野城」ともよばれています。 今からおよそ五百六十年前。 文安五年(1448年)。 関の一族は、戦乱を逃れ、伊勢から信州の新野に移 ってきまし…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 「日本武尊と明神さまの弓」を読んでいただきありがと うございました。 日本武尊と明神さまの弓https://dowakan.hatenablog.com/entry/2021/06/28/070000

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 21 「どうじゃな。これは、わしの使いをしている大蛇でのぅ。 この湖の守り神なのじゃ」 「あっはっはぁー」 老人の笑い声が、森の中にひびきわたりました。 その森は、諏訪明神の社の森でした。 明…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 20 たけるはいわれるままに、腰に結んでいた帯をとくと、 大蛇に向かってぽんと投げました。 大蛇は、二つの口で帯の両端をくわえると、がばっと 立ち上がりました。 頭が二つ、体が一つの双頭の大蛇…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 19 すると・・・。 目の前に、真っ青な大きな湖が。 湖は、しーんと、静まりかえっていました。 「なんて美しい湖だろう」 たけるは、湖にみとれていました。 ふと気がつくと、老人の姿がみえません…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 18 越後の帰り、たけるは老人の家に寄りました。 「このすばらしい弓のおかげで、城にたてこもっていた 賊をみごとに討つことができました。ほんとうにありがと うございました」 たけるは、老人にお…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 17 次の朝。 たけるは、老人が大切にしている弓を借りて、越後へ向か って旅立ちました。 越後へついたたけるは、賊がたてこもっている城を攻めま した。 普通の弓では、高い山の頂にある城まで矢が…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 16 「そなたは、これからどこへ行くのじゃ」 「越後の城へ、賊を討ちに行きます」 「越後へ?」 「はい。父から、東方の十二の国を平定するようにと命じ られました」 「父上の名前は」 「影行天皇で…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 15 「おこしてしまったかな」 「いいえ。ぐっすりひと眠りしました」 たけるは、老人の弓を借りて引いてみました。 たけるが持っている弓より、数倍強い弓でした。 「この弓があったら、東方の国もた…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 14 どの位の時間がすぎたのでしょうか。 「ビューン」 「バシッ」 「ビューン」 「ビューン」 「ばしっ」 どこからか、弓をひく音が聞こえてきました。 「誰だろう」 外に出ると、月明かりの下で、老…

花のほほえみ

ばら

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 13 雨と風がふせげるだけのあばら家でした。 「こんばんは」 「こんばんは」 たけるは、玄関で声をかけました。 「こんなに遅く、どなたかな」 腰の曲がった老人が顔をだしました。 「旅の者です。今…

花のほほえみ

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花のほほえみ

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日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 12 おばは、すさのおのみことから献上された「草薙の 剣」と、火うち石などが入っている袋をたけるに渡し ました。 「何かあったら、この剣と袋の中に入っている物を 使いなさい」と。 たけるは、草…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 11 「おばさま。私は、父からきらわれているのでしょうか。 西方の熊襲や出雲を平定し、さきほど国へ戻ったば かりなのに、父はまた東方の国を征伐せよと命じまし た。兵もよこさず、家来はたった一…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 10 ところが・・・。 西方の国から戻ったばかりのたけるに、天皇は次の命 令を出しました。 「東方の伊勢・尾張・三河・遠江・駿河・甲斐などの十 二の国の、荒れすさぶ神や朝廷に服従しない者たち …

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 9 数日後。 たけるは、肥川で、出雲たけると水浴びをしました。 先に川からあがったたけるは、出雲たけるの太刀を、 偽物の太刀とすりかえました。 後からあがってきた出雲たけるは、疑うこともなく偽…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 8 そのことばを聞き終えると、おうすは弟のたけるを刺 し殺しました。 おうすは、熊襲たけるの兄弟を征伐し、熊襲の地を 平定しました。 その時から、おうすは「日本武尊」とよばれるように なりまし…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 7 「あなたは、どなたですか」 「私は、大和の国を治めている景行天皇の皇子、おう すのみこと。天皇は、おまえたち二人が服従しないの で、うちとってこいと私に命じたのだ」 「たしかに、西方の国に…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 6 宴がたけなわになった頃。 おうすは懐から剣をとりだすと、兄のたけるの襟をつ かみ、胸をぐさりと刺しました。 「きゃあー」 「たけるさまが刺されたー」 女の人たちの悲鳴で、大さわぎになりまし…

日本武尊と明神さまの弓

[童話]日本武尊と明神さまの弓 日本武尊と明神さまの弓 5 祝宴の日。 おうすは、おばの倭比売命から借りた着物を着て、可 憐な少女に変装し、熊襲たけるの家へ行きました。 そして、祝宴に参加する女たちの中にまぎれこみ、う まく家の中へ入ることができま…