2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 31 「ふくさん。おとうさんの具合は、どうですか」 白駒は、毎日長者の様子をみにきました。 長者は、一日ごとに元気になりました。 元気になった長者は、ふくといっしょに、岩場 のまわりを散歩しました。 二週…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 30 となりの部屋には、湯がどんどんわきでていました。 「白駒。これ、温泉?」 「温泉ですよ。おとうさんがもう少し元気になった ら、温泉へ入れてあげてください。ふくさんも、ど うぞ。この温泉は、体があたた…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 29 大きな岩と岩とにかこまれた穴の中へ入っていくと、 結構広い部屋がありました。 広さは、六畳くらいでしょうか。 部屋の奥には神棚があり、大きなろうそくに火がと もっています。 部屋のすみには、ふとんや…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 28 ふくは、湯でひたした花びらで、長者の体をやさし くさすってあげました。 すると、どす黒かった長者の顔が、うっすらと桃色 になりました。 「とうちゃん。きっと元気になれるよ」 「そうだな。元気になれそ…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 27 「女神さまが、おとうさんを守ってくださったので しょう。おとうさんが歩けるようになって、よかっ たですね」 白駒も、うれしそうでした。 「とうちゃん。これが、黄金色の花だよ」 「おお、これが黄金色の…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 26 白駒は、あっという間に、長者をつれて硫黄岳の 岩場へもどってきました。 長者は、白駒の背からおりると、よろよろっと三 歩くらい歩きました。 「とうちゃん。だいじょうぶ?」 ふくは、長者にかけよりまし…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 25 ふくと白駒は、あたたかな湯に手と足をひたしま した。 ふくは、花びらを一枚とり、湯にひたしました。 そして、黄金色の花びらで、手と足をさすってみ ました。 すると、ふしぎなことに、疲れがいっぺんにと…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 24 おとうさんが元気になっても、あなたはこの 岩場にとどまって、病気で苦しんでいる人を すくってください。けっしてこの場所をはな れてはいけませんよ。 おとうさんのことは、 私が守ります。わかりましたか…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 23 黄金色の花は、小さな水たまりの中に咲いてい ます。 「これが、黄金色の花なのね。なんて美しい花 かしら」 ふくは、そっと花にさわりました。 すると・・・。 どこからかやさしい声が聞こえてきました。 「…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 22 ふくと白駒は、再び黄金色の花をさがして歩きま した。 今度は馬からおりて、岩の裏までさがしました。 それでも、黄金色の花はみつかりません。 あきらめて家に帰ろうとした時、硫黄岳のけわし い岩場の方か…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 21 ふくと白駒は、朝からずっと走りまわっていたので、 くたくたに疲れていました。 白駒も、はぁーはぁーと、荒い息をはいています。 「白駒、疲れたでしょ。少し休みましょうか」 「けわしい山道だから、疲れま…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 20 黄金色の花といっても、どんな形をしているのか、 どのくらいの大きさなのか、何もわかりません。 わかっていることは、ただひとつ。 その花が、黄金色をしていて、ぴかっぴかっと光 っているということだけ。…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 19 朝日をあびて橙色にそまる赤岳、夕日に輝く赤岳 は美しいですよと、白駒が教えてくれました。 途中、鹿とかもしかに会いました。 あちこち探しましたが、赤岳にも黄金色の花はあ りません。 権現岳、 西岳、 …

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 18 続いて、八ヶ岳の主峰、赤岳をさがしました。 赤岳は、赤褐色をした岩が、ごろごろころがって います。 雲海の向こう、はるか遠くに富士山がみえます。 「白駒。赤岳からみる富士山は、すてきね」 「女神さま…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 17 「森の妖精みたい。山でこの花に会ったら、どの 人もほっとするでしょうね」 ふくと白駒は、黄金色の花をさがしてあちこち歩 きました。 しかし、硫黄岳でも、黄金色の花をみつけること はできませんでした。 …

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 16 山頂には、たくさんの礫がころがっていました。 白駒も歩きにくそうです。 礫と礫のすきまには、馬の顔の形をした白い花 が咲いています。 「白駒。この花は、なんという花?」 「コマクサですよ」 「コマクサ…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 15 ふくと白駒は、けわしい道を登ったりおりたりして、 黄金色の花をさがしました。 しかし、天狗岳には、黄金色の花はありませんでした。 次は、根石岳をさがしました。 この山でも、黄金色の花はみつかりません…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 14 「女神さまは、こまどりやうぐいすの声が、大好き なんです。こまどりのおすは、顔と胸が鮮やかな橙 色をしていて、きれいですよ」 「こまどりって、美しい鳥なのね。いつかこまどり の姿をみたいわ」 からま…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 13 まず、天狗岳からさがすことにしました。 天狗岳といっても、赤い岩肌がむきだしになった 東天狗岳と、山頂まではいまつがはえている西天 狗岳とあります。 西天狗岳は、青天狗岳ともよばれ、からまつなど の…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 12 みあげると、そそりたつようなけわしい山が、帯 のように続いています。 「この山のどこかに、黄金色の花が咲いているの ね。どの山に咲いているのかしら」 「さあ・・・。女神さまの話では、黄金色の花は ぴ…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 11 「白駒というのね。私といっしょに、黄金色の花 をさがしてください。お願いします」 ふくは、白駒にお願いしました。 ふくは、白駒の背に、とび乗りました。 白駒は、「ひひーん」と一声なくと、すごいいき …

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 10 手紙には、そう書いてありました。 大雪の夜、ふくの家に泊まった女の人は、八ヶ岳 の女神さまだったのです。 「とうちゃん。待っていてね。私、八ヶ岳へ行っ て、黄金色の花をさがしてくるから」 病人を、一…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 9 あなたのことは、小さな時からよく知っています。 私が、おとうさんを助けてあげましょう。 この白い馬に乗って、黄金色の花をさがしなさい。 黄金色の花は、八ヶ岳の山の中に咲いています。 黄金色の花がみつか…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 8 ふくは、必死で長者の看病をしました。 そんなある朝。 「とんとん、とんとん」 玄関の戸をたたく音がしました。 「こんなに朝早く、だれだろう?」 ふくは、いそいで玄関の戸を開けました。 すると、白い馬が立…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 7 「ふくや。わしは、もうだめだ。長くは生きられ ないだろう。わしが死んでも、一人でしっかり生 きていくのだよ」 「とうちゃんが死んでしまったら、私は一人ぼっ ちになってしまう」 そう思うと、ふくは、いて…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 6 二人は、困っている人をみると、知らん顔ができず、 ときどき旅人を泊めてあげていたのです。 夏のある朝。 「ふく・・・ふくー。早くきておくれ」 ざしきの方から、長者の声が聞こえました。 いそいでかけつけ…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 5 女の人はぐっすり休み、次の朝にはすっかり元 気になりました。 「お世話になりました。大切なおかあさんの着 物、おかりしていきます」 女の人は何度も礼をいい、屋敷をあとにしました。 「大雪の夜、あの人は…

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[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 4 「この着物は、なくなったかあちゃんの着物で す。さあ早く、この着物にきがえてください」 「そんな大切な着物を・・・私にかしてくださ るのですか。ありがとうございます」 女の人は、土間のすみで、きがえを…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 3 「どなたかな?」 長者が、やさしく声をかけました。 「旅の者です。今夜泊めていただけないでしょ うか」 戸をあけると、女の人が立っていました。 女の人は、雪でびっしょりぬれ、寒さのためぶ るぶるふるえて…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 2 ちらちら降っていた雪も、いつのまにかぼたん 雪にかわりました。 雪は、どんどん積もっていきます。 庭も畑も山も、雪で真っ白になりました。 そして、夕方には吹雪になりました。 その夜のことです。 「とんと…