2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 8 「うわさでは、この森でスキー大会が行われ るとか。その会場を作るために、森の木をた くさん切るそうだ。なぜ人間たちは私たちを みごろしにするのだろうか」 かえでには、人間の気持がわかりませ…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 7 かえでも、仲間の木といっしょに、切ら れてしまうことになったのです。 この丘での楽しかった思い出が、まるで 昨日のことのように、かえでにはなつか しく思い出されました。 「とうとう、わしも…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 6 「仲間の木が、切られてしまうのだな」 かえでは、さみしく思いました。 「まさか、丘の上のわしの所まではこない だろう」 かえでは、安心していました。 ところが・・・。 人間たちが、丘の上まで…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 5 かえでは、村のこどもたちが大好き。 こどもたちも、かえでの木が大好きでした。 こどもたちだけでなく、おとなもかえでの木 が大好きでした。 こどものころを思い出し、かえでの美しい芽 吹きや黄…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 4 すずめ・しじゅうから・からす・おながなど は、一年中かえでの木に遊びにきます。 りすやかもしかも、やってきます。 せみやとんぼ、かぶと虫も遊びにきます。 森の動物たちは、かえでが大好き。 …

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 3 かえでの木には、こげらもやってきます。 こげらは、木の幹をコツコツとたたきながら、 虫を食べてくれます。 「ギィーギィー」 初めてこげらの鳴き声を聞いた時、かえでは びっくりしました。 「は…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 2 「かっこう、かっこう」 五月なかばになると、かっこうがやってきます。 かっこうの元気な声が、森にひびきわたります。 「かっこう君、君は元気だねぇ」 かえでは、かっこうに話しかけます。 「も…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 1 志賀高原の丘の上に、大きな“いたやかえで” の木が立っています。 「あーあ、よく寝たのぅ。さて、ぼつぼつ目 をさますとするか」 二百才になったかえでは、大きなあくびをし ました。 そして、芽を…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 29 夏になると、女神さまたちはかきつばたに会い に、八島の湿原にやってきます。 「かきつばたは本当に美しい少女だったけれど、 花になってもやっぱり美しいのね」 そういいながら、女神さまたちは…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 28 かきつばたがなくなってから、ニ千年の月日が すぎました。 夏になると、八島の湿原には、何百本ものかき つばたの花が咲きます。 かきつばたがなくなった後、二度とこんな悲し いできごとがおき…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 27 すると・・・。 「山彦さん、こんにちは。ひさしぶりね。私、この 紫の花に生まれ変わったの。山彦さん、この花は何 という花か知っている? かきつばたというのよ。 きれいな花でしょ。山彦さん…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 26 山彦も毎日霧が峰へ行き、かきつばたをさがし ました。 でも、かきつばたをみつけることはできません でした。 かきつばたはどこへ消えてしまったのでしょうか。 一年後。 山彦が、八島の湿原へ行…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 25 かきつばたがいなくなって一ヶ月後。 おばさまはかきつばたの後を追うようになく なってしまいました。 宝物のようにかわいがってきたかきつばたが いなくなって、おばさまは生きるはりあいを な…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 24 かきつばたのおとうさんもおかあさんも、かき つばたのことを心配して、あちらこちらさがし まわりました。 女神さまたちも、てわけしてかきつばたをさが しました。 しかし、かきつばたをみつけ…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 23 でも、かきつばたは、山彦のことばを信じる ことができませんでした。 山彦がはっと気がついた時、かきつばたの姿 は消えていました。 「かきつばたさんはどこへ行ってしまったの だろう?」 びっ…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 22 「山彦さんは、私の顔はとても美しいといった けれど、本当はみるにたえないみにくい顔だっ たのね」 「そんなことはない。きみの顔は、女神さまの ように美しい。まぶしいくらいの美しさだ」 「…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 21 ところが・・・。 そこへ「ぴゅぅー」と強い風がふいてきました。 鏡のように平らだった水面が、ざわざわと波立 ちました。 そして、水面にうつったかきつばたの顔も、た ちまちみにくい顔に変わ…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 20 「かきつばたさんはまぶしい位美しい。それに 心のやさしい人だ。おらはかきつばたさんのよ うな美しい人を、今までみたことがない」 「そんな・・・」 「うそだと思うなら、その沼の水面に、自分…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 19 「やっと、山彦さんに会うことができた」 かきつばたは、胸をどきどきさせながら、 山彦が近づいてくるのを待ちました。 「山彦さん、こんにちは。今日こそ、山 彦さんに会えるかなと思って、朝か…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 18 その後。 かきつばたは、何度か霧が峰へ行きました。 「おばさまに、きすげの花・・・」をという 気持もありましたが、「もう一度山彦に会い たい」という気持が強かったのです。 しかし、山彦に…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 17 その人は、その後おさななじみの人と結婚し たわ。そして、生まれたのが山彦。だから、 山彦のことは、ずっと気になっていたわ」 「そうだったのね。私何も知らなかった」 「この話は、今まで誰に…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 16 「おばさまは、山彦のことを知っているの?」 「ええ、よく知っていますよ。だって、山彦 は私が大好きだった人のこどもですもの」 「えっ?」 「少女の頃、私は霧が峰で人間の少年に会っ たの。…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 15 「おばさまが一日も早く元気になると良いね」 山彦は、そういってはげましてくれました。 二人は心をひかれながらも、その日は少し話 をしただけで、別れました。 その日の夕方。 かきつばたから…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 14 「かきつばたさん、霧が峰へ何しにきたの?」 「病気のおばさまに、きすげの花をプレゼント しようと思って、花をつみにきたのよ」 「かきつばたさんって、やさしいんだね」 「おばさまは病気なの…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 13 「霧が峰へ行くと、えものを追って走って いる、足の早い少年がいる。色は黒いけれ ど、とてもりりしい少年だ」と。 かきつばたも「いつか山彦に会いたいな」 と思っていました。 かきつばたは、…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 12 「美しい少女だと評判の、あのかきつばた さんなの?おらは、かきつばたさんに会え るのを、ずっと楽しみにしていたんだよ」 少年は、うれしそうにいいました。 「あなたの名前は、なんていうの?…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 11 「こんにちは。すごい霧だったね」 少年が、にこにこしながら近づいてきました。 「こんにちは。すごい霧でびっくりしたわ。 もう家に帰れないのではないかと思ったわ」 かきつばたは、ほっとした…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 10 どのくらいの時間が過ぎたのでしょうか。 かきつばたには、長い時間が過ぎたように 感じました。 霧がさっと晴れ、目の前には、真っ青な空 があらわれました。 そして、広い草原のむこうから、こ…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 9 しかし、濃い霧のため、一寸先もみえません。 とほうにくれたかきつばたは、沼のほとりで、 霧が晴れるのをじっと待ちました。 「おとうさま、ごめんなさい。私はおとうさ まとの約束をやぶり、一人…

かきつばたになった少女

[童話]かきつばたになった少女 かきつばたになった少女 8 そのため、かきつばたは、誰にも行き先を つげず、たった一人で霧が峰へ行こうと思 ったのです。 霧が峰へつくと、広い草原には、きすげの 花が、一面に咲いていました。 「わー、きれい!!」 かき…