2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 8 「私、清太さんといっしょに、馬を走らせてい る時が一番幸せ」 「おらも、きよちゃんと一緒にいる時が、一番 幸せだよ」 夢中で話をしているうちに、二人は高原へ着き ました。 高原には、あち…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 7 「清太さん。きよってよんで」 「おらが、おじょうさまのことを、きよちゃ んってよんでいいの」 「いいわ、清太さん。二人だけの時は、きよ ってよんでね」 「じゃあ、これからは・・・きよち…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 6 「私、清太さんのこと、うちの使用人だなん て思ったことは、一度もないわ。清太さんの こと、本当の兄ちゃんだと思っている」 「おじょうさまの気持はうれしいけれど、お らはこの家の使用人だ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 5 「さあ、おじょうさま。遅くなるといけないか ら、急いで馬小屋へ行こう」 「清太さん。二人だけの時は、きよってよんで」 「おらは、この家の使用人だ。おじょうさまのこ とを、きよなんてよび…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 4 「川越しも、木落としも、命がけなんでしょうね」 「祭のたびに、何人もけが人がでる。時には、亡 くなる人もある。山奥から巨大な樅の木をひいて きて、四つの神社に四本ずつ大きな柱を建てる…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 3 「御柱祭は、七年に一度、申年と寅年に行われる 諏訪大社のお祭だよ。 中でも、上社の川越しと、 下社の木落としは、すごいね。山から切り出され た十数トンもある樅の木が、木遣りの歌を合図に…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 2 「おらの家の近くでも、座禅草の花が咲く。もう 花が咲いているかな」 清太は、故郷の諏訪を思い出しながらいいました。 「その場所はね、諏訪の神様が住んでいる守屋山 のふもとなんだ。春にな…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 1 春の遅い佐久にも、ようやく暖かな春がやって きました。 庄屋の庭でも、福寿草の花が咲き始めました。 「おじょうさま」 「なぁに、清太さん」 「これから、高原へ行こう」 「これから?」 「…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 9 「吉衛門さんは、いい息子さんがいて、幸せじ ゃのぅ」 「いや、清太は、わしの息子ではない。わが家 で働いている少年じゃ。こんなすてきな息子が いたら、うれしいのだが」 清太と吉衛門は、なぜか親…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 8 十二才の清太にとって、何頭もの馬の世話をす ることは、辛い仕事でした。 馬にえさをやったり、馬小屋の掃除をしたり、 馬の体をふいたり。 時には、小川へつれて行き、馬の体を洗います。 清太は、朝…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 7 白駒は「心配かけてごめんね」というように、 清太に甘えました。 清太は、白駒がどこかへ行っていたことを、誰 にも話すことができませんでした。 「おじょうさま。実は、白駒が・・・」 「なぁに? 清…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 6 白駒がいなくなったら、おじょうさまはがっか りするだろうな。 なんとしても、白駒をみつけなくては。 清太は馬に乗り、白駒を探して歩きました。 でも、白駒はどこにもいません。 四時間後。 「もしか…

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[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 5 「夢か・・・」 白駒のことが心配になった清太は、馬小屋へ急 ぎました。 小屋をのぞいた清太は、心臓がとまるくらいび っくりしました。 白駒がいません。 あれは夢ではなく、本当のことだったのでしょ…

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[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 4 清太が庄屋の家へきて十日後。 月のきれいな夜でした。 「白駒」 「白駒」 誰か、白駒をよんでいます。 女のひとのやさしい声でした。 すると、馬小屋の戸が、音もなくすぅーとあき ました。 そして、白…

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[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 3 ふくは、清太の母の乳で、大きくなりました。 でも、八才の時、一人で守屋山へ福寿草の花 をとりに行き、道に迷いこごえ死んでしてし まったのです。 実の兄弟のように育ったふくの死は、清太に とって…

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[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 2 「清太さん。もう白駒に会ったの」 「はい。今、会ってきました。白駒は、雪の ように白い美しい馬ですね。それに、やさし い目をしている。あんなすてきな馬の世話が できるなんて、幸せです」 清太は…

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[童話]女神さまからのおくりもの 諏訪からきた少年 1 それから二年がすぎました。 まゆみの実が桃色になった秋のある日。 庄屋の家へ、少年がやってきました。 「清太。これが、わしの一人娘、きよじゃ。今、 九才」 「きよです。よろしく」 「おらの名は、…

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[童話]女神さまからのおくりもの 白駒は、誰の馬? 8 「よかったね。白駒」 「おじょうさまは、白駒が好きなんだね」 「私、白駒が大好き」 「わしも、大好きじゃ。白駒は、やさしい目をし ている。わしは若い時から、庄屋の家で馬の世話 をしてきた。でも…

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[童話]女神さまからのおくりもの 白駒は、誰の馬? 7 「あなたの名前は、白駒よ。今日から、わが家 で暮らすの。私は、きよ。とうちゃんの名前は、 吉衛門。よろしくね」 すると、白駒が「ひひーん」となきました。 これが、きよと白駒の出会いでした。 こ…

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[童話]女神さまからのおくりもの 白駒は、誰の馬? 6 「とうちゃん。この馬、誰の馬かしら」 「誰の馬だろうね。馬がたおれていた所へ、わが 家の住所をおいてきた。飼い主がいれば、訪ねて くるだろう」 「早く迎えにきてくれるといいね。とうちゃん、 馬…

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[童話]女神さまからのおくりもの 白駒は、誰の馬? 5 湖のまわりを歩いていると、この馬がたおれて いたんだ。 馬は、足にけがをしていた。 とうちゃんはよもぎを探し、傷の手当てをして やった。 近くに家があるかなと探したが、一軒もない。 湖は、こわい…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 白駒は、誰の馬? 4 とうちゃんは、倒れている木の株に腰をおろし 休んだ。 そして、手伝いのばあやがにぎってくれたむす びを食べた。 その後。 再び帰る道を探し、山の中を歩いた。 しばらくすると、「こっちですよー」と…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 白駒は、誰の馬? 3 今朝。 とうちゃんは、夜があけないうちに、八ヶ岳の ふもとの山へ、きのこをとりに行った。 山へ着いたのは、朝日がのぼるころだったかな。 おととい、雨が降ったせいか、きのこがぞくぞ くはえていた…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 白駒は、誰の馬? 2 すると。 庭には、かわいい子馬が。 雪のように白い馬でした。 子馬は、つぶらなひとみで、きよをじっとみて います。 「わぁー、かわいい馬。 とうちゃん、この馬、 どうしたの」 「足にけがをしていた…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの プロローグ 6 それから三年がすぎました。 八ヶ岳のふもと、佐久の庄屋の家に、かわいい 女の子が生まれました。 長い間こどもが授からなかった夫婦は、大喜び。 きよと名づけられた女の子は、心の優しいこど もに育ちまし…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの プロローグ 5 清太が生まれて一カ月後。 桜の花が満開になったある日。 朝日長者の門前に、生後一カ月位の女の子と、 梶の紋がついたお守りが置いてありました。 「神様が、わしら夫婦の願いを、やっときい てくださった。あ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの プロローグ 4 「出発は、いつでしょうか」 「二十日後」 「えっ、二十日後?」 「そうじゃ。急なことで悪いのぅ。どうしても、 ふくと一緒に、あちらの国へ行ってほしいのだ。 あちらへ行ったら、いろいろなことを経験して …

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの プロローグ 3 「あちらで、きよに会えるでしょうか」 「それはわからぬ。会えるかもしれないし、会 えないかもしれない。・・・というのは、あちら の国へ行く時、すべての記憶が消されてしまうか らじゃ。だから、きよに会…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの プロローグ 2 「ふくも、清太やきよと別れるのが辛いようじゃ」 「ふくちゃんは、どちらへ」 「守屋山のふもとの村じゃ」 「その山は、たしか・・・信州にある山」 「そう、諏訪湖の近くにある山じゃ。清太、お願 いがある…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 女神さまからのおくりもの プロローグ 1 「あのかたが、丘の上で待っていますよ」 清太は、丘へ向かって、馬を走らせました。 「何か御用でしょうか」 「清太は、こちらへきて、何年になる?」 「五百年になります」 「そう…