2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 11 ふりむくと、白いひげのおじいさんが立ってい ました。 みたことのないおじいさんです。 おじいさんは、白い着物をきて、白い頭巾をか ぶっていました。 上品なおじいさんでした。 おじいさんは、長い杖をつい…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 10 「三郎さまは・・・いつ・・・みえるのかしら」 「ぼつぼつ・・・みえるのではないかな」 「三郎さまが・・・早くみえるといいね。・・・ 私、諏訪の話を・・・聞きたいわ」 しらかばといぬのふぐりの花が、話…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 9 そんな春のある日。 かなは、一人でしらかば湖へ行きました。 そして、しらかばの木の下で、湖をながめ ていました。 すると・・・。 どこからか、小さな声が聞こえてきました。 「だれかしら」 あたりをみまわ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 8 山深い村にも、ようやくあたたかな春がやっ てきました。 湖のほとりでは、空色のいぬのふぐりの花が 咲き始めました。 かなは、いぬのふぐりの花が大好き。 「かな、この空色の花はね、いぬのふぐりと いう花だ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 7 「竜? そんなもの、いるはずないよ」 「村に伝わっている大昔の話だろ」 「この世に、竜なんているはずないじゃん」 「かなちゃん。湖に竜がいると思っているの。 馬鹿みたい」 友だちは、みんなそういいます。…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 6 「とうちゃん。竜って、どんな姿をしているの」 「さあ、どんな姿をしているのだろうね。大き な角があるとか、たくさんのうろこがついてい るとか、美しい玉を持っているとかいわれてい るが、とうちゃんにもわ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 5 地の国の生活は夢のような生活でしたが、三郎 は愛する妻のことを忘れることができませんで した。 三郎は、神様に許しをもらい、千日かけて、や っとの思いで村にもどってきました。 しかし、三郎は、なぜか竜…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 4 兄たちは、末っ子の三郎を、「三郎や、三郎や」 といってかわいがっています。 三郎も、兄たちが大好きでした。 ところが・・・。 三郎があまりに美しい妻をもらったので、兄た ちは三郎にやきもちをやきました…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 3 「さあなぁ。村には、竜がいるといういいつた えがあるが、竜の姿をみた人はだれもいないか らね。でも、しらかば湖には、竜がいるかもし れないよ」 おとうさんは、夢みるようにいいました。 「ねぇ、とうちゃ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 2 「とうちゃん。今、何か声が聞こえなかった?」 「いやー、何も。何か聞こえたかい」 「おっかあ、おっかあーという声が聞こえたの」 「そうか。とうちゃんも、しらかば湖でつりをし ていた時、『おっかあ、おっ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 1 たてしな山は、「諏訪富士」とよばれ、大昔から 佐久や諏訪の人々に愛されてきました。 山のふもとに、美しい湖があります。 湖の名前は、しらかば湖。 音無川をせきとめてつくられた湖でした。 一月末のある日…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 51 湖に大きな波がたち、ふくと白駒は、深い湖の底 に沈んでいったのです。 人々は、この湖を「白駒池」とよぶようになりま した。 秋になると、真っ赤に紅葉したもみじが、湖に美 しくうつっています。 そして、…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 50 約束を守るということは、むずかしいことですね。 でも、どんなことがあっても、約束はちゃんと守 らなくていけません。とくに、神様との約束は・・ ・ね。一つでも赤い木の実を食べたものは、もう 自分の家に…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 49 そして、山深い森の中へたどりつきました。 シラビソやツガの原生林が、ずっとつづいています。 目の前には、青くすんだ美しい湖がみえます。 その時、どこからか声がきこえてきました。 「ふく。なぜ、私との…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 48 何事もなく、二日間がすぎました。 三日目の朝のことです。 「とんとん、とんとん」 戸をたたく音がしました。 でてみると、白駒でした。 白駒は、かなしそうな顔をして立っています。 ふくは、こんなかなしそ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 47 白駒は、こまってしまいました。 「三日くらいだったら、だいじょうぶだろう」 そう思った白駒は、しぶしぶふくを家へ送っていき ました。 「ふくさん、三日間だけですよ。三日たったら、迎 えにきますからね…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 46 「女神さまとの約束をやぶると、ふくさんの命は ありません。私は、女神さまとの約束をやぶった、 何人もの人を知っています。だから、ふくさんに は、女神さまとの約束を、ちゃんと守ってほしい のです」 「…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 45 「とうちゃんは、元気でいるかしら」 「たきたてのあたたかなごはんが、食べたいな」 「大好きなりんごも食べたい」 そう思うと、ふくは家に帰りたくなってしまいま した。 秋になり、硫黄岳のふもとの木々も…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 44 でも、冬は寒さがきびしく、雪が何メートルも積も ります。 雪は、六月末までとけません。 部屋の中はあたたかでしたが、何カ月間も毎日雪を みてくらさなくてはなりません。 ふくは、けわしい岩場の生活に、だ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 43 ふくの食事は、小さな赤い木の実だけ。 その木の実を、一つ口にすると、なぜかおなかが いっぱいになりました。 「白駒。これ、なんの木の実?」 「女神さまも、毎日この木の実を食べていますよ。 でも、名前…

女神さまとの約束

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 42 一本きりだった黄金色の花も、今では十数本にふ えました。 「ふくちゃんのおかげで、おらはこんなに元気に なれた。ありがたいことじゃ。ふくちゃん、あり がとう」 元気になった人は、どの人もふくに感謝し…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 41 ふくは、白駒がつれてきた人の体を、黄金色の花 びらで、やさしくさすってあげます。 すると、今にも死にそうだった人が、何日かする と元気になりました。 早い人は一週間くらいで、長い人でも一ヵ月後に は…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 40 おじいさんが家に帰ると、今度は足の悪いおばあ さんがやってきました。 はうことしかできなかったおばあさんでしたが、 二週間後には杖なしで歩けるようになりました。 「ふくちゃん。ありがとう。歩けるよう…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 39 おじいさんが歩けるようになると、岩場のまわりを、 二人で散歩しました。 「ふくちゃん。太陽がのぼってきたよ。朝日をみる と、元気がでるね」 「おじいさん。夕焼けにそまった山は、きれいね」 硫黄岳から…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 38 「ここは、八ヶ岳の山奥、硫黄岳の岩場ですよ。 おじいさんは、昨日ここへきたのです」 「昨日? ここに」 「そうです。白い馬に乗って、ここへきたので すよ」 「白い馬? わしは、なにもおぼえておらん」 ふ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 37 今にも死んでしまいそうな人と、二人っきりで すごすのかと思うと、ふくは不安でした。 「ふくさん。だいじょうぶですよ。明日朝早く、 様子をみにきます」 そういって、白駒は帰っていきました。 その夜。 ふ…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 36 「おじいさん、おじいさん。だいじょうぶですか」 何度も声をかけましたが、おじいさんは返事をし ません。 「だいじょうぶですよ。女神さまが守ってくれて いますから。おとうさんと同じように、湯でひた し…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 35 「ふくも、元気でくらすのだよ」 その夜、長者とふくは、なかなかねつくことが できませんでした。 次の朝。 長者は、白駒の背にのって、一人で家へ帰って いきました。 ふくは、女神さまとの約束を守り、黄金…

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 34 「女神さまとの約束は、守らなくてはいけない けれど、とうちゃんはふくがいないとさみしい」 長者も、さみしそうでした。 「私だって、とうちゃんといっしょに家に帰り たい。でも、女神さまにとうちゃんを助…