2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 21 一枚目の花びらが、ゆっくり開いていきます。 「清太さん。花びらが開いてきたわ」 きよが、うれしそうにいいました。 続いて、二枚目・三枚目・四枚目と、花びらが開い ていきます。 そして、…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 20 一方、きよも、「私は、清太さんが大好き。 清太さんは、私のことをどう思っているのかしら」と、 心の中で問いかけていたのです。 どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 二人には、長い時間…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 19 おらが家柄のいい家に生まれていたら、おらの家が 裕福だったら、きよちゃんが大好きだよといえるのに。 おらの家は、貧しい。 食べていくのが、精一杯だ。 だから、庄屋のおじょうさまとして、…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 18 「私、次郎さんと結婚したくない。次郎さんがわが 家をついでくれるなら、私はよそへとついでもいい と思っている」 清太は、なにもいえず、きよの話をだまって聞いて いました。 きよちゃんが結…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 17 すると、 「清太さんは、私の結婚相手は、家柄がよくて、お 金もちなら、それでいいの?」 いつもおだやかなきよが、強い口調でいいました。 こんなきよをみたことがなかったので、清太はびっ …

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 16 「おれ、庄屋さまのお使いで、何度も次郎さんの 家へ行った。おじさんもおばさんもいいかただし、 次郎さんもやさしそうだし、いい話だと思うけれ どね」 「次郎さんは、やさしい人だわ。でも・…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 15 「わが家でも、白米は特別な日しか食べないわ。普 通の日は、麦やあわ・さつまいも・豆などが入って いるごはんを食べているでしょ」 「おらの家は貧乏だったから、あわやさつまいもの 中に、ほ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 14 「ゆうすげって、日光きすげのように、群落にはなら ないのかしら」 「そういえば、あっちに一本、こっちに一本という感 じだね。じゃあ、ここで、暗くなるのを待とうか」 「清太さん。ちょっと…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 13 「ゆうすげの花が咲いていた場所をおぼえている?」 「おぼえているよ」 二人は、白駒の背にのり、ゆうすげが咲いている場 所へ走って行きました。 「きよちゃん、ここだよ」 「あら? まだつぼ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 12 「その後も、何度か馬小屋にいない時があった。 でも、朝にはちゃんと戻ってきていたので、誰に もその話をしたことはない」 「そんなことがあったのね。私、何も知らなかったわ」 「おらは、最…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 11 清太は、話すのをためらっています。 「清太さん。何でも話して。かくしごとはいやよ」 「白駒。きよちゃんに、あの話をしてもいいかな」 「話してもいいよ」というように、白駒は「ひひー ん」…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 10 「とうちゃんが、湖のまわりを歩いていると、生まれた ばかりの白い馬が、足にけがをしてたおれていたん だって。近くに家が一軒もなかったので、とうちゃん はその馬を家につれてきたの。 生ま…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 9 「とうちゃんは帰る道をさがして、山の中をあちこ ち歩いたみたい。シラビソやコメツガなどの原生 林をぬけると、突然目の前に、大きな美しい湖が あらわれたそうよ。楓が真っ赤に紅葉していて、 …

花のほほえみ

雪割草

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 8 「それがね・・・どこからきたのか、わからないの」 「どういうこと?」 清太は、思わず聞きかえしました。 「十年前の秋。とうちゃんは、八ヶ岳のふもとの山 へ、きのこをとりに行ったの。ところ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 7 高原の上だけでなくすそまで、一面に花が咲いて います。 数千本、いや数万本。 もっとたくさんの花が咲いているかもしれません。 高原全体が、黄橙色にそまっていました。 「わぁー、きれい」 二…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 6 「まあ、清太なら・・・心配ないだろう。きよ、気をつけ て行っておいで」 「ありがとう、とうちゃん」 「ゆうすげの花は、黄色の美しい花だよ。ゆっくりゆ うすげの花を見ておいで」 吉衛門の許…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 5 「きよ。おまえは、嫁入り前の娘なのだよ。今、縁談の 話もあるしね」 「清太さんは、誠実な人よ。とうちゃんが心配すること は、何もないわ」 きよは、きっぱりいいました。 「とうちゃんも、そ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 4 「私、とうちゃんに聞いてみる。とうちゃんが許してく れたら、一緒に行ってくれる?」 「もちろん。庄屋さまが、外出を許してくれるといいね」 二人は、ゆうすげの花を見るのを、楽しみにしてい…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 3 梅雨があけたある日。 きよが、馬小屋へやってきました。 「清太さん。ゆうすげの花って、見たことがある?」 「あるよ。一度だけ」 「どこで見たの」 「何年か前、庄屋さまのおともで、夕方霧ケ峰…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 2 「なくなった奥さまも、きさくでやさしいかただった が、おじょうさまもやさしいね」 「おじょうさまは、いつもわしらに、ご苦労さまって 声をかけてくれる。 おじょうさまのことばを聞くと、 疲…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 1 八年がすぎました。 清太は、二十才。 きよは、十七才になりました。 きよは、美しい娘に成長しました。 庄屋の家では、畑やたんぼの仕事をする人、山の 仕事をする人、蚕を飼う人、台所の手伝い…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 17 その後。 きよと清太は、白駒の背にのり、八ヶ岳のふもとの 高原へいろいろな花をみに行きました。 春は、座禅草やすみれを。 初夏には、れんげつつじを。 真夏には、日光きすげややなぎらん…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 16 「えーとね、たしか・・・権現岳と横岳かな」 清太は、天狗岳・根石岳・硫黄岳・横岳・阿弥陀 岳と、八ヶ岳連峰の山の名前を教えてくれました。 八ヶ岳連峰には、まだ雪が残っています。 「清…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 15 「沈黙の愛って」 「さあ・・・」 清太は、知っていました。 でも、てれくさくていえませんでした。 なぜなら、清太は、きよが大好きだったからです。 二人は、座禅草が咲いている高原を、ゆ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 14 「おら、きよちゃんと初めて会った時、本当にびっ くりした」 「なぜ驚いたの」 「ふくちゃんにそっくりだったから。ふくちゃん、や っぱり生きていたんだねって、いいそうになった」 「私と…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 13 「そうなんだ。ふくちゃんは、みんなが留守の間 に、一人で守屋山へ福寿草の花をとりに行った んだ。そして、道にまよってしまった。運悪く、そ の日雪が降ってね。ふくちゃんはこごえしんで…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 12 「そんな縁で、清太さんはわが家へきてくれた のね。あの家に、ふくちゃんという女の子がい たでしょ」 「いたよ。ふくちゃんは、かわいい少女だった。 ふくちゃんはね、かあちゃんの乳で育っ…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 11 「おかあさんは、いつも家にいるの」 「かあちゃんは、週に二度、長者の家へお手伝 いに行っている」 「長者の家って?」 「守屋山のふもとにある朝日長者の家だよ」 「その家なら、私知って…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 座禅草が咲いている高原で 10 清太は、自分は何をいっているのだろうと思 いました。 庄屋のおじょうさまが、貧しいおらの家に遊 びにくることなんて、万に一つもないのに・・・と。 でも、かあちゃんに、きよちゃんを紹介…