2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 21 「明神よ、いつまで奥さんとはなれてくらすつもりじゃ。 一日も早く奥さんと仲なおりしたまえ」 どこからか声が聞こえてきました。 「そうじゃのぅ。一日も早く妻に戻ってきてもらわなくて はのぅ」 明神さまは、…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 20 もともと、人がうらやむほど仲のいい夫婦。 明神さまは奥さんと離れているのがつらく、夜になる と、毎晩奥さんに会いにいきました。 バリバリッ。 みしっ。 ぱりっ。 みしっ。 「今夜も寒いのぅ」 そういいながら…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 19 そういうと、奥さんはさっさとしたくをして、湖の向こう 側へ行ってしまいました。 そして、明神さまが何度迎えに行っても、奥さんは帰 ってきませんでした。 「私、この下諏訪の地が気にいったわ。朝も早くから …

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 18 「そんな・・・。じゃあ、私との約束は、どうなるの。私、 長い間、黄金色のまゆ玉をかしてもらえると楽しみに して待っていたのよ」 心のやさしい奥さんでしたが、さんざん楽しみにして 待っていたまゆ玉です。 …

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 17 ある日。 明神さまは、おそるおそる奥さんに話しました。 「なあ、妻よ。約束しておいて悪いけれど、黄金色の まゆ玉を、わしの友だちにしばらくかしてあげてくれ ないか」と。 すると・・・。 「あなたは、今度ま…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 16 明神さまは困ってしまいました。 「じゃあ、こどもの病気がなおったら、すぐまゆ玉を 返しておくれよ」 「もちろん。こどもが元気になったら、すぐまゆ玉を 返すよ」 近いうちにまゆ玉をかしてもらえることになっ…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 15 「明神よ、わしのこどもを助けてほしい。おまえが持っ ている黄金色のまゆ玉を手にすると、どんな病気でも なおるというではないか。そろそろ次のまゆ玉が授か るころだね。次のまゆ玉が授かったら、そのまゆ玉を…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 14 「でも・・・あのかたは、もう一つ黄金色のまゆ玉がほ しくなって、私にまゆ玉をかしてくれないのではない かしら」 奥さんは、なぜかそう思いました。 女のかんです。 そんなある日。 遠くの国から、ひさしぶりに…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 13 それから三十年がすぎました。 「ねえ、あなた。ぼつぼつ二つ目のまゆ玉が授かる ころね。今度黄金色のまゆ玉を授かったら、そのま ゆ玉を私にかしてくださらない?」 ある日、奥さんがいいました。 「ああ、いい…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 12 明神さまが授かった黄金色のまゆ玉は、三十年に一 つしか手にいれることができない貴重なまゆ玉でした。 たとえ、明神さまがもう一つ黄金色のまゆ玉をほしい と思っても、手に入れることはできなかったのです。 明…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 11 明神さまがまゆ玉を手にとりみていると、どこからかお ごそかな声が聞こえてきました。 「明神よ、諏訪の地をおさめてくれて、ありがとう。今日 は、おまえに黄金色のまゆ玉を授けよう。そのまゆ玉 は、どんな願い…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 10 明神さまと奥さんは、守屋山のふもとで蚕をかってい ました。 二人は、諏訪地方に養蚕をひろめようと、伊勢の方か ら寒さに強い桑の木や、蚕の卵をとりよせました。 そして、技術者をよび、養蚕の技術を学んでいた…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 9 仲のいい夫婦には、珍しいことでした。 そして、奥さんがやしきをでていってしまったのです。 明神さまは奥さんがでていってしまったことを、みん なにないしょにしていました。 そのため、みんなが寝静まったころ、…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 8 「明神さまと奥さま、けんかしたのではないかしら。 そして、奥さまが家をでていってしまったのかもし れないよ」 「まさか・・・」 「あんなに仲のいい夫婦ですもの、けんかなんか しないでしょ」 「夫婦ですもの、…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 7 「そうだ。今度は湖の向こう側へ先まわりして待ってい たら、どうだろう」 「おお、そうすれば、うまくいくかもしれないぞ」 青年たちは、湖の向こう側へ先まわりして、明神さまを 待つことにしました。 でも、明神…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 6 二月初めのある夜。 青年たちは、今夜も明神さまの後をつけていました。 湖の真ん中あたりまできた時、「ばりばりっ、みしっ」 という大きな音がして、氷がわれはじめました。 「わぁー!」 「気をつけないと、湖へ…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 5 「明神さまって、足が早いんだね。まるで、氷の上を すべるように歩いていったよ」 「それにしても、明神さまはどこへ行ったのだろう」 「好きな人のところへ行ったのかもしれないよ」 「ばかをいえ。あんな美しい奥…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 4 その日の夜。 青年たちは、物陰にかくれて、明神さまがでてくる のをじっと待っていました。 すると・・・。 明神さまがでてきました。 「おお、寒いっ」 明神さまは、空をみあげみぶるいしました。 そして、なにや…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 3 なんと、その氷の割れ目は、明神さまが住んでい る神社の近くから、湖の向こう側までずっと続いて いました。 「昨夜、氷の上を歩いていた人は、明神さまだった のだろうか」 「まさか・・・?」 「真夜中、明神さま…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 2 次の朝。 「なんだ、これは・・・?」 「すごい割れ目だね」 湖をみた人々は、びっくり。 湖の氷が割れていたのです。 氷がせりあがり、いくえにもかさなりあっています。 大きな山は、こどもの背丈ほどありました。…

黄金色のまゆ玉

[童話]黄金色のまゆ玉 黄金色のまゆ玉 1 星のきれいな夜でした。みしっ、みしっ。 ぱりっ。 バリバリッ。 ばしゃっ。 諏訪湖の方から、大きな音が聞こえてきました。 「何の音だろう?」 「氷が割れたような音だが」 「だれか湖に落ちたのだろうか」 人々は…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 30 その後。 青い獅子頭を寺の外へだすと、なぜかはげしい雷 雨になりました。 そのため、日照りで困っている時には、その獅子頭 を祭り、雨乞いをするそうです。 男が彫った獅子頭は、「雨乞いの青獅子」とよばれ、 …

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 29 すると、滝つぼの水面に、男が彫った獅子頭がぽ んと浮いてきました。 和尚は、男の形見の獅子頭を持って、寺へ帰りま した。 そして、本堂へ獅子頭を供えました。 次の日。 和尚は、檀家の人と一緒に、不動滝へ男…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 28 今まで、わしのことを気づいてくれた人は、誰もいな かった。だから、わしは二度と外へでることはできな いとあきらめておったのじゃ。でも、おまえが気づい てくれた。どんなにうれしかったか。仏師よ、おまえ は…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 27 和尚がはっと我にかえると、雷雨はやみ、空には太 陽がでていました。 「ああ、こわかった。こんなこわい思いをしたのは、初 めてじゃ。わしは、悪い夢をみていたのだろうか。い や、夢ではない。わしは、たしかに…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 26 「ごろごろっ」 「ごろごろっ」 「ぴかっ、ぴかっ」 すさまじい雷でした。 「ぴしゃっ」 「ぴしゃっ」 雷が、近くに落ちたようです。 「うおーっ、うおーっ」 はげしい雷雨の中、獅子がひっきりなしに不気味な さ…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 25 すると、滝つぼの水面に、真っ青な獅子が浮かび あがってきました。 「うおーっ」 獅子は一声ほえると、きっとした目で、空をにらみ ました。 突然、あたりが真っ暗になりました。 「ごろごろっ、ごろごろ」 雷が…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 24 そうさけぶと、男は滝つぼにむかって、獅子頭をな げつけました。 「あっ」 和尚が声をあげた時には、獅子頭は滝つぼに落ち ていました。 「わしには、すばらしい獅子頭にみえたが・・・」 和尚は、小声でつぶやき…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 23 その後、滝へ行き、男は身を清めました。 身を清めた男は、獅子頭をもって、滝の上の方へ登 っていきます。 適当な岩をみつけると、獅子頭をその岩の上へおき ました。 男は、獅子頭をじっとみています。 どのくら…

瑠璃寺の青獅子

[童話]瑠璃寺の青獅子 瑠璃寺の青獅子 22 でも、なかなか立ちあがれません。 男は、体の具合でも悪いのでしょうか。 やっと立ちあがった男は、よろよろしながら滝へむか いました。 和尚は、男にみつからないように、そっと後をつけま した。 滝へついた男…