2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの 清太、山の中の湖へ 7 湖のほとりでは、楓やななかまどの葉が、真っ赤 に紅葉しています。 その姿が、湖面にうつっていて、きれいでした。 「なんて美しい景色だろう。きよちゃんにみせて あげたいな」 美しい景色をみてい…

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[童話]女神さまからのおくりもの 清太、山の中の湖へ 6 しばらく歩いていくと、コメツガ・シラビソ・モミなどの 森がありました。 大きな木の根元には、黄緑色のこけがたくさんつい ています。 「庄屋さまがみたという木は、この木にちがいない。 じゃあ、…

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[童話]女神さまからのおくりもの 清太、山の中の湖へ 5 麦草峠の近くに、モミやツガなどの原生林があると 聞いたけれど、どこにあるのだろう。 清太は、森の中をあちこちさがしました。 でも、モミやツガの木は、どこにもありません。 清太は、倒れた木の上…

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[童話]女神さまからのおくりもの 清太、山の中の湖へ 4 やしきを出てから、どのくらいの時間がすぎたので しょうか。 やっと、麦草峠に着きました。 足の丈夫な清太でしたが、峠に着いた時には、ぐ ったり疲れていました。 きよちゃんといっしょにきたかっ…

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[童話]女神さまからのおくりもの 清太、山の中の湖へ 3 清太は、誰も通らない山道を、きよのことだけ考 えて歩きました。 清太の足音だけが聞こえます。 「さみしい道だな」 清太は、ふぅーと大きな息をはきました。 しばらくいくと、東の空がだんだんに明…

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[童話]女神さまからのおくりもの 清太、山の中の湖へ 2 麦草峠まで徒歩で、どのくらいかかるのだろうか。 清太は、麦草峠に向かって歩き始めました。 きよちゃんは、おらが追い出されたことを知った ら、心配するだろうな。 やしきにもどり、もう一度、庄屋…

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[童話]女神さまからのおくりもの 清太、山の中の湖へ 1 次の朝。 清太は、夜が明けないうちに、庄屋の家を去り ました。 空には、星がきらきら輝いています。 「きよちゃん。たくさんの思い出を、ありがとう。 八年間、きよちゃんと暮らすことができて、ほ…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 18 清太は、どの馬も好きでした。 でも、白駒は、特別な馬でした。 白駒は、きよとの思い出につながる大切な馬だっ たからです。 白駒の背にきよをのせて走ることはもうないのだ なと思うと、清太はさみし…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 17 「では、これで失礼します。明日は早いので、あ いさつをしないで出かけます。どうかみなさまに よろしくお伝えください。八年間、いろいろお世 話になりました」 そういって、清太は吉衛門の部屋を出ま…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 16 「ありがとうございます。この八年間、庄屋さまに は、わが子のようにかわいがっていただきありがと うございました。私は、幸せ者です。庄屋さまはじ めおじょうさま、この家で働いている人たちに親切 …

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 15 「わかりました」 清太は、心ならずもそう答えました。 でも、心の中では、こうさけんでいたのです。 「おらは、きよちゃんと結婚できるような家に生 まれたかった。そして、きよちゃんと結婚したか っ…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 14 「清太。そうはいかない。実は、きよも清太が 大好きだといっている。結婚することができな い若い二人が、同じ屋根の下で一緒に暮らす ことはできない。きよのためにも、清太のため にも、これ以上一緒…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 13 清太のような青年が、きよのむこになってくれ たら、どんなにいいだろう。 そして、二人で力をあわせ、この家を守ってく れたらどんなにうれしいことか。 吉衛門は、そんなことを考えていたのです。 「…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 12 吉衛門は、落ち着きをとりもどし、静かに話し始め ました。 「清太。大声を出してごめん。つい興奮してしまっ て。ほんとうに申し訳ない」 吉衛門は、清太にあやまりました。 「いいえ。私こそ失礼なこ…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 11 「でも・・・おら・・・いや、私の家は、貧しい。食べ ていくのが精一杯です。それに、第一、家柄が違 います。だから、どんなにおじょうさまが好きでも、 おじょうさまと結婚させてくださいとはいえま…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 10 吉衛門は、腹がたってきました。 清太にというより、自分自身に腹をたてていたの です。 「はい、わかっております。私が、家柄のいい家 に生まれていたら、おじょうさまと結婚させてくだ さいと、お願…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 9 「なに? きよのことが、大好きだ・・・と」 その時、清太には、「おまえは、とんでもないやつだ。 おまえは、この家の使用人なんだぞ」という、吉衛門 の心の声が聞こえました。 しかし、清太は、きっぱ…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 8 「いや・・・清太・・・そういうことを聞いているのではな くて、つまり・・・その・・・清太は・・・きよのことが好きか どうかと聞いているのだ」 吉衛門は、どう聞いたらいいのかわからず、口ごもっ て…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 7 「清太さん。とうちゃんがよんでいるわ」 「庄屋さまが?」 「清太さんに、聞きたいことがあるって」 「おらに聞きたいことって、何だろう」 清太は、吉衛門の部屋へいそぎました。 「何かご用でしょうか…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 6 「私は、なんといわれても平気だわ。清太さんは、 りっぱな人だもの。誰からも好かれているし」 「きよ、たのむ。とうちゃんの気持も、わかってほ しい」 吉衛門は、きよのいうとおりだと思いました。 で…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 5 「きよ、正直にいおう。とうちゃんは、清太が大好 きだ。清太は、誠実な心のやさしい青年だ。体も 丈夫だし、自分の考えもしっかり持っている。そ の上働き者だ。家柄のことを除けば、きよの結婚 相手とし…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 4 「わが家は、旧家。家柄がちがいすぎる」 「とうちゃん。家柄って、そんなに大事なの」 「大事だ。幼い時から、同じような環境で育った人 なら、結婚してもうまくやっていける。でも、育った 環境が違うと、…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 3 「清太さんが、わが家にきた時から。でも、最初は、 大好きな兄ちゃんという感じだった。清太さんが心 から好きだとわかったのは、霧ケ峰高原へゆうすげ の花をみに行った時」 「そうか・・・そうだったの…

女神さまからのおくりもの

[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 2 「きよ。好きな人がいるのかい」 「はい」 「とうちゃんが、知っている人かな」 「清太さん」 「清太・・・清太って、わが家で働いている清太かい」 「そう、清太さん」 「きよ。清太は、わが家の使用人な…

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[童話]女神さまからのおくりもの それぞれの思い 1 八月のある日。 「きよ、ちょっと」 「とうちゃん。なに」 「きよは、いとこの次郎のことを、どう思っているん だい」 「次郎さんは、やさしい人だわ。でも、私は、次郎 さんと結婚する気はありません」 …

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[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 25 「とうちゃん。ただいま」 「ただいまもどりました。おそくなってすみません」 「おかえり。遅いからどうしたのかと心配していた のだよ」 吉衛門が、ほっとした顔でいいました。 「とうちゃん…

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[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 24 二人は、時のたつのも忘れ、ゆうすげの花をみ ていました。 「きよちゃん。家に帰ろう。庄屋さまが心配して いるといけないから」 「そうね。帰りましょう。今夜は、ゆうすげの花を みることが…

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[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 23 「清太。おまえは、誰に遠慮をしているのだ。吉 衛門に遠慮をしているのか。きよが好きなら、好 きだよといえばよいではないか」 どこからか、また声が聞こえてきました。 おらは、世話になって…

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[童話]女神さまからのおくりもの ゆうすげの花咲く高原で 22 おらは、きよちゃんが大好き。 でも、きよちゃんは、庄屋のおじょうさま。 おらは、庄屋の家の使用人。 どんなにきよちゃんが好きでも、きよちゃんと結婚 することはできない。 清太は、自分の…