2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 17 小桜姫とふしぎな鈴 15 ところが、ある日、姫がおそれていた大きな 戦が始まりました。 それは、三年にもわたる、長いきびしい戦で した。 ひとつきに何度となくくりかえされる夜討ち、 朝がけ、やあわせ、きりあい。ど…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 16 小桜姫とふしぎな鈴 14 大江家の一人娘が、なぜ三浦家へとついだ のかって、ふしぎに思うでしょうね。 おとうさんは姫にこどもが生まれたら、一 人大江家のあととりにするつもりだったよ うです。 しかし、仲のよい夫婦…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 15 小桜姫とふしぎな鈴 13 年ごろになった姫は、はっとするほど美しい 娘になりました。 姿が美しいだけでなく、姫は心のやさしい人 でした。 姫が二十才になった春のことです。 「姫、義意はわしがほれた男じゃ。この人な …

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 14 小桜姫とふしぎな鈴 12 「なぜ?」 「私たち……もうすぐ……ちってしまうの」 「でも、また会えるでしょ?」 「ええ、姫さま。来年……また会いましょう ね。この鈴のことは……だれにも……ないし ょよ。……姫のおとうさまにも………

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 13 小桜姫とふしぎな鈴 11 姫は何度も鈴をふり、桜の花に話しかけ ました。 「こんにちは。私、小桜よ」 「……?」 「はじめまして。私、小桜です」 「……小桜?」 桜の花がとまどっている様子が、姫にも わかりました。 「桜…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 12 小桜姫とふしぎな鈴 10 次の日。 姫は桜の木の下へ行き、桜の鈴を七回ふって みました。 「リーン・リーン・リーン…」 すんだ音色が、あたりにひびきわたります。 「昨日、桜の花が話していたことは、本当か しら?」 姫…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 11 小桜姫とふしぎな鈴 9 「みんな聞いた? 桜の花びらの鈴…です って」 「その鈴を…靜かにリーン・リーン・リーン… と何回かふると、私たちのような花や小鳥と …お話することができるんですって」 「それ、本当なの?」 「…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 10 小桜姫とふしぎな鈴 8 「誰だろう?」 あたりをみまわしましたが、誰もいません。 じっと耳をすませて聞いていると、桜の花 がこんなおしゃべりをしていました。 「小桜姫さまってね、…女の子だけど…小鳥 やちょうが…大好…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 9 小桜姫とふしぎな鈴 7 もう一つの鈴は、桃の実の形をしていて、中 に入っている鈴も、少し大きめです。 「リーン・リーン・コロンころん」 なんともいえない良い音がします。 和紙でできていて、あどけないこどもの顔が か…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 8 小桜姫とふしぎな鈴 6 その鈴は、諸国を旅していた坊さんが、大江 家に泊まった時、お礼にくれたものでした。 「この鈴を、大切にするように」 そういって、坊さんは立ち去ったそうです。 一つは、桜の花びらで囲まれた中に…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 7 小桜姫とふしぎな鈴 5 しかし、たくさんすぎて、幼い姫には数え ることができませんでした。 「ねえ、おとうさま。花はいくつ咲いてい るの?」 「ニ百くらいは咲いているだろう」 おとうさんはうれしそうにいいました。 姫…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 6 小桜姫とふしぎな鈴 4 「姫、きてごらん。椿の木にめじろがきて いるよ」 庭へ小鳥が来ると、おとうさんは小鳥の名 前を教えてくれます。 姫は、小鳥の名前や鳴き声を、自然におぼ えました。 そして、小鳥たちと仲良しにな…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 5 小桜姫とふしぎな鈴 3 しかし、うぐいすはなかなかうまく鳴けません。 「うぐいすさん、がんばってぇ」 姫は、心の中でうぐいすをおうえんしました。 「ホーホケキョ、ほーほけきょ」 しばらくして、うぐいすはじょうずに鳴…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 4 小桜姫とふしぎな鈴 2 やしきの広い庭には、桜・梅・椿など、たく さんの木が植えてあります。 その木へ、いろいろな小鳥がやってきます。 梅の花が何輪か咲き始めた春のある日。 「ホ…ホ…」 「ケキョ…、…ケキョ」 庭で小鳥…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 3 小桜姫とふしぎな鈴 1 今からおよそ五百年前。 小桜姫は、相模の国・鎌倉で生まれました。 姫の生家は、大江といいます。 大江家は、大昔からずっと続いた旧家でした。 大江家には男の子が一人もなく、こどもは姫 だけ。 大…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 2 プロローグ 2 「今年もきれいに咲いたのね」 かなは、そっと花のにおいをかぎました。 桜の花の香りが、あたりにぷーんとただよいま した。 大好きなおとうさんがなくなった年の春。 かなはおとうさんといっしょに、この丘…

ふしぎな鈴

[童話]ふしぎな鈴 ふしぎな鈴 1 プロローグ 1 小高い丘にのぼると、目の前に南アルプス の山々が美しくみえます。 山深いこの町にも、ようやくあたたかな春 がやってきました。 丘の上の桜が、今年も美しく咲きました。 かなは丘へ着くと、桜の木の方へ走…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 24 それから五百年がすぎました。 守屋山のふもとでは、何万本にもふえた福寿草 が、春の光をあび、美しく咲いています。 その中に一本、福の生まれ変わりの花が咲いて います。 その福寿草は、守屋山にまだ…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 23 すると・・・。 山の頂からも、おごそかな声が聞こえてきました。 「わしは守屋山に住んでいる明神じゃ。二人とも 福に会えて、本当に良かったのぅ。 長者夫婦よ、 福を大切に育ててくれて、ありがとう。…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 22 奥さんの目には、美しい娘になった福 の姿が、はっきりみえました。 「とうちゃん、かあちゃん。今年も忘 れずに私に会いにきてくれたのね。う れしいわ。 私ね、明神さまにお願いして、とうち ゃんがみた…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 21 福がたおれていた場所にたどりついた時、 二人は「あっ」と大声をあげました。 わずかに残った雪の中に、長者が・福が・ 村の人々が、あんなにみたいと思った黄 金色の花が、一本咲いていたのです。 黄金…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 20 長者は、たくさんの宝物を、使用人や村の 人々に、おしげもなくわけ与えました。 大切なこどもをなくしてしまった長者には、 宝物などもう何の価値もなかったのです。 長者は、福がたおれていた場所にも、…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 19 次の朝。 守屋山のふもとの反対側で、雪で真っ白に なった福がみつかりました。 寒さのため、福はこごえ死んでしまったの です。 「福や、福や。目をさましておくれ」 「福、なぜ守屋山へなど行ったの?」…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 18 「もしかして、守屋山へ行ったのでは・・・」 小雪のちらつく中を、大がかりな山狩りが、 一晩中おこなわれました。 でも、福をみつけることはできませんでした。 「福や、福や。どこへ行ってしまったの」…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 17 「福や、福や。おきるのじゃ。こんな所 でねていると、こごえしんでしまうぞ」 うすれゆく意識の中で、福はその声を聞 きました。 その声は、どこかで聞いたことがあるよ うな、とてもなつかしい声でした…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 16 どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。 あたりがなんとなくうす暗くなってきま した。 福がでかけた時は、からりと晴れていた のに、今にも雪が降ってきそうでした。 しばらくすると、雪がちらちらと舞…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 15 やっと、守屋山につきました。 何かにとりつかれたように、福はあてもなく 山の中を歩きまわりました。 黄金色の花といっても、どんな形をしている のか、どれくらいの大きさなのか、福には何 もわかりま…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 14 福は、お守りの鈴を首にかけると、守屋 山にむかって、細い急な道を登って行き ました。 福が歩くたびに、「リーン・リーン」と、 鈴の良い音がします。 「黄金色の花って、どんな花かしら。ど んな形をし…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 13 それから一年が過ぎました。 山深い村にも、ようやくあたたかな春 がやってきました。 ある日、福はたった一人で留守番をす ることになりました。 大勢の人に囲まれて生活している福に は、珍しいことでし…

福寿草になった少女

[童話]福寿草になった少女 福寿草になった少女 12 とうちゃんも若い時、黄金色の花がみた くて、毎年守屋山に登って、花をさがし たものだ。しかし、なぜか一本も見つけ ることができなかった。村の人は、だれ も黄金色の花をみたことがないそうだ。 一度…