2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

女神さまとの約束

[童話]女神さまとの約束 女神さまとの約束 1 八ヶ岳のふもと、中山峠の近くに、さいのか わらという山深い里があります。 そこには、長者屋敷とよばれる大きな家があ り、長者と娘が仲良くくらしていました。 娘の名前は、ふく。 父親おもいのやさしい少女…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 20 かなとりゅうと神さまは、ライオンの背中 に乗りました。 「さあ、出発するぞぅ」 「うおー」 ライオンは高くほえると、空高くまいあが りました。 かなの家が、かなが住んでいる高原が、だ んだんに小さくな…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 19 「そうだ。みんなでライオンを送って行こう。 わしも近いうちに西の国へ行きたいと思って いたところじゃ。かなとりゅうも、いっしょ にいこう。さあ、かな。りゅうをだいて、ラ イオンの背中へおのり」 神さ…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 18 すると、ライオンが話しはじめました。 「王妃はかなしがって、小さくなった私を、金 のロケットにしたのです。そして、王妃は、な くなるまで私を大切にしてくれました」 ライオンは、やさしかった王妃をなつ…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 17 「神さま、ライオンはなぜ小さくされてしま ったのですか」 かなは、神様にたずねました。 「このライオンはのぅ、二千年くらい前、西 の国の王妃がかわいがっていたライオンなの じゃ。 ある日、ライオンは魔…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 16 「かな、さっき松虫草のまわりを舞っていた ちょうは、なんというちょうか知っているか」 「知りません。神さま、なんというちょうで すか?」 「くじゃくちょうというのじゃ。この高原へ きても、めったにく…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 15 「かなさん、ありがとう。やさしいかなさん のおかげで、私は長いねむりからさめること ができました」 ライオンは、うれしそうにいいました。 かなはびっくりして、大きくなったライオン をみています。 「少…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 14 おじいさんは、ライオンをそっと地面におろし ました。 すると、ライオンは足をふんばり、しっかり立 ちあがりました。 そして、あっという間に、五十センチくらいの 大きさのライオンになりました。 りゅうは…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 13 「おじいさん、このライオンね、ときどき うーんうーんってうなるの。なぜうなるの かしら」 かなは、おじいさんに聞きました。 「そうか、ちょっとわしにみせてごらん」 おじいさんはロケットを手にのせ、じ…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 12 「いたいよぉー・・・いたいよ・・・」 ライオンが、またないています。 かなは、いつものように、ロケットをやさ しくなでてあげました。 「うー、わん、わん」 とつぜん、りゅうが大声でほえました。 びっく…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 11 だれがふいているのでしょうか。 どこからか清らかな笛の音も聞こえてきます。 ちょうたちは、その笛の音にあわせ、楽しそ うに舞っています。 「うーん・・・うーん・・・」 ライオンのうなり声で、かなはは…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 10 ちょうの羽には、大きな目玉のようにみえる もようがついています。 ちょうをじっとみていると、かなはだれかに みつめられているような気がしました。 しばらくすると、あっちの方から一匹、こっ ちの方から…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 9 松虫草の花は、秋の日をあび、きらっきらっと 美しく輝いています。 「なんてきれいだろう」 かなは、松虫草の花に見とれていました。 すると・・・。 花のみつをすいにきたのでしょうか。 どこからか、赤いちょ…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 8 丘へつくと、夏のあいだ美しく咲いていた日 光きすげややなぎらんは、すっかり枯れてい ました。 そして、草原は一面すすきでおおわれていま した。 「松虫草の花は、咲いているかしら」 かなは、松虫草の花を探…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 7 「そんなばかな・・・。とうちゃんは、かなの いうことを信じたい。でも、この話だけは、信 じることができないね」 おとうさんは、困ったような顔をしました。 さわやかな秋になりました。 かなとりゅうは、高…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 6 「とうちゃん、とうちゃんが誕生日にくれた ライオンのロケットね、夜になると、うーん うーんってうなるの。うなるだけではなく、 いたいよぉっていうの。とうちゃん、どうし たらいい?」 ある夜、かなはおと…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 5 しばらくすると、 「い・・た・・いよぉ。・・・いたいよ・・・」 こんな声も聞こえてきました。 「どこがいたいの?」 かなは、ライオンに聞きました。 でも、ライオンはなにも答えません。 困ったかなは、ロケ…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 4 すると・・・。 うなり声は、ライオンのロケットが入れて ある机の方から聞こえてきました。 「まさか・・・?」 そう思ったかなは、居間へもどりました。 「うーん・・・うーん・・・」 しばらくすると、またう…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 3 おとうさんは、旅先でライオンのロケットを みた時、「なんてかわいいライオンだろう」 と思いました。 「娘が生まれ、七才になった日、ライオンの ロケットを、娘にプレゼントしよう」 おとうさんは、そう心に…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 2 五月十日。 かなは、七才になりました。 「かな、誕生日おめでとう。誕生日のプレゼ ントだよ」 そういって、おとうさんは、かなの首にロケ ットをかけてくれました。 それは、金でできた、二センチくらいの大き…

ライオンめざめる

[童話]ライオンめざめる ライオンめざめる 1 霧ヶ峰高原のふもとに、一軒の山小屋があり ました。 その山小屋には、心のやさしい少女が、おと うさんとおかあさんとくらしています。 いや、もう一匹、少女がかわいがっている柴 犬「りゅう」もいっしょでし…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 19 「若者よ、わしに新しい命を与えてくれて、 ありがとう。感謝しているぞー。わしはう れしいのじゃ。わしはこの村が大好きじゃ。 だから、このままずっとこの丘に住みつづ けるつもりじゃ」 かえ…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 18 村の人々は、若者が奏でる清々しい笛の音に、 時間も忘れうっとりと聞きほれました。 こうして、切りたおされたかえでの木は、一 人の若者によって、コカリナとよばれるすて きな笛に生まれかわり…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 17 半年がすぎました。 ある日、やっと気にいった音色のする笛ができ ました。 「やっと、清らかな音色のする笛ができたぞ!」 若者は、とびあがってよろこびました。 一カ月後。 若者は、かえでの木…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 16 若者と村の人たちは、何本も何本も、笛を作 りつづけました。 しかし、澄んだ音色のする笛はできませんで した。 「かえでの木では、だめなのかもしれない。 あきらめるよりしかたがないのか」 若…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 15 「一日も早く、すてきな音色のする笛ができる と良いね」 「かえでの笛って、どんな音色がするのだろう」 こどもたちも、笛ができるのを楽しみにしてい ます。 村の人たちも、若者に協力して、笛…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 14 「なんて大きなかえでの木だろう。せめて かえでの木だけでも、なんとか生かしてあ げたいものだ。そうだ。かえでの木で笛を 作ったらどうだろう。きっとすばらしい笛 ができるにちがいない」 若…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 13 「森の動物たちは、これからどこで暮らすの だろうか。森の仲間たちのことが心配だね」 切りたおされたたくさんの木は、口々になげ き悲しみました。 小雪の舞う、寒い季節になりました。 若者が…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 12 雨が降ったり、風が吹いたりして、どの木も だんだんに枯れていきました。 「私たちは、これからどうなるのだろう。い つまで、こんな所に横たわっているのだろうか」 「なにかに利用してくれると…

笛の音よ、永久にひびけ

[童話]笛の音よ、永久にひびけ 笛の音よ、永久にひびけ 11 「いよいよ、わしの番か。さぞ、痛いだろうな」 そう思った時、耳元で「チェーーン」という高 い音がしました。 「ばさりっ」 かえでの木のたおれる音が、丘の上にひびきわ たりました。 かえでは…