2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 41 「なんて美しい湖だろう」 かなは、そっとつぶやきました。 「かなー。私はあなたに会えるのを、ずっと待っ ていたのよー。早く、お会いしたいわー」 諏訪湖の方から、三郎の妻のやさしい声が聞こえ てきまし…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 40 「はぁっ、はっ」 おじいさんは、大きな息をはくと、かなを背中に 乗せて、空高くまいあがりました。 「わぁー、いいながめ」 かなは、大よろこび。 いくつもの山、いくつもの里をこえ、二人は諏訪 湖へむかっ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 39 「そうそう、忘れるところだった。妻に、かな のことを話したら、妻が会いたいというのじゃ」 「奥さまが、私に?」 「そうじゃ。竜がいると信じているかなに、ど うしても会いたいらしい。さあ、かな。わしの…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 38 「おじいさんは、奥さまに会えたの」 「会えたよ。十数年ぶりに、諏訪湖で妻と会う ことができた」 「会えてよかったね。おじいさん、うれしかっ たでしょ」 「そりゃあ、うれしかった。ずっと妻に会いた いと…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 37 わしは、神様に許しをもらい、この村にもどっ てきた。しかし、妻はどこにもいなかったのじゃ。 わしは、「おっかあ、おっかあー、どこにいるー。 いたら返事をしてくりょー」とさけびながら、妻 をさがして歩…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 36 「奥さまも、竜になったのですか」 「ああ、妻も竜になってしまった。わしと妻は、 諏訪湖のほとりで会った。ひとめみただけでお たがいに好きになり、結婚した。ところが、妻 があまりに美しい人だったので、…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 35 「かな。残念だが、時間じゃ。おかあさんの元気な 姿をみることができて、よかったのぅ」 「おじいさん。かあちゃんの姿をみせていただきあ りがとうございました」 かなは、何度もお礼をいいました。 「どう…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 34 かなは、大きくうなずきました。 「では、ほんのちょっと、おかあさんの姿をみせて あげよう。しっかり目をあけてみるのだよ」 そういうと、おじいさんは、玉を何回かなでました。 「さあ、かな。玉の中をのぞ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 33 「それで、わしの胸ばかりみていたのか。この玉 は、真澄の玉じゃ」 「ますみの玉?」 「そう、真に澄むと書いて、ますみの玉じゃ。こ の玉はのぅ、わしが諏訪地方を守る竜神になった 時、妻のおとうさんから…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 32 そんな人間たちのまちがった思いが、竜の世界 にも、影響を与えているのじゃ。どの人も、ま ず人のことを考えられるとよいのじゃがのぅ」 おじいさんは、遠くをみながらいいました。 「おじいさん。おじいさん…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 31 わしらは、地震や竜巻・台風などの、天変地異 にもかかわっているのじゃ。このごろは、世界 の各地で、地震や竜巻などによる大きな災害が おこっているね。 なぜ大きな災害がおこるか、 知っているか」 「知り…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 30 「おじいさん。昨夜、すごい雷がなったわ。ご ろごろっと大きな音がして、ぴかぴかっと稲妻 が光っていた。そして、ぴしゃっという音がし て、どこかへ雷が落ちたようだった。こわかっ たわ」 「雷は、こわい…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 29 「くんぷう?」 「薫る風と書いて、薫風じゃ」 「夏に吹く涼しい風。体がこごえてしまいそう な冬の北風、台風の時のあらあらしい風、竜巻 のうずを巻くような強い風」 「そうだね。いろいろな風があるね。ど…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 28 「人間の世界と同じじゃ」 おじいさんは、笑いながらそういいました。 その時、「ぴゅぅー」と、涼しい風が吹いて きました。 「かな。この風は、だれが吹いているか、知 っているかな」 「だれが吹いているの…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 27 「どの竜も、体の色が変わるのですか」 「いや、中には、ずっと黒いままの竜もいる。 どのくらい修行をしたかによって、体の色が変 わってくるのじゃ」 「おじいさん。最後は、どんな色になるの」 「最後の色…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 26 「おじいさん。どの竜も、おじいさんのような 色をしているのですか」 「いや、生まれたばかりの竜は、茶色じゃ。竜 の赤ちゃんは、かわいいよ。小さなうちは、お かあさんのもとで育てられる。少し大きくなる…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 25 「ああ、いるとも。大昔は、どの人も、かなの ように心が美しかった。 疑うことを知らない、 むじゃきな人ばかりだったのじゃ。だから、竜 の姿をみることができた。どの人も、神様と話 をすることができたの…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 24 かわりに、さっきのおじいさんが、にこにこし ながら近づいてきました。 「わしは、諏訪地方を守っている竜神じゃ。今 日は、かなに竜の姿をみせてあげようと思って、 諏訪湖からやってきたのじゃ」 「私のた…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 23 「わぁ、竜だぁー! しらかば湖には、竜がい たんだぁ」 かなは、びっくりして大声でさけびました。 竜は、だんだんに近づいてきます。 「わしは、大昔、たてしな山のふもとに住んで いた三郎じゃ。わしは、こ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 22 「なんだろう?」 みると、湖のむこうから、竜らしきものが近づ いてきました。 うすい黄色の竜でした。 竜の体には、銀色のうろこがたくさんついてい ます。 そのうろこが太陽にあたり、きらっきらっと光 っ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 21 「おじいさん。とうちゃんもね、しらかば湖には、 竜がいるかもしれないよって、いっています」 「そうか。かなとおとうさんは、今でも湖に竜が いると信じているのか」 おじいさんは、にっこり笑いながらいい…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 20 「私、湖のほとりで、だれかが話しているのを 聞いてしまったの。もうすぐ三郎さまがしらか ば湖にみえるよって、話していたわ。三郎さま って、竜になった三郎のことではないかと思う の。だから」 「かなは…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 19 「その人のことを、心から信じていれば、どんなに ひどいことをされても、その人をうらんだり、にく んだりできないものだということを、わしはその時 知ったのじゃ。その人のことを信じるということは、 いい…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 18 「わしは、心から信じていた兄たちに、湖の 深いふちにつき落とされた。びっくりしたけ れど、わしは兄たちをうらんだり、にくんだ りすることができなかった。 『あんなひどいことをされたのに、おまえは 少…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 17 「おじいさんは、なぜ兄さんたちにうらぎられ たの」 「兄たちは、わしにやきもちをやいたのじゃ。 わしの妻は、村一番の・・・いや信州一の美し い人だった。姿が美しいだけでなく、心の清い やさしい人だっ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 16 「そうか。友だちにいじめられたのか。竜など、 だれもみたことがないから、竜がいるなんて信 じることができないのだろうね」 おじいさんは、なぜかさみしそうな顔でいいま した。 「わしも、若いころ、信じ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 15 「だれにうらぎられたの」 「一番仲がよかった友だち。友だちはね、しらか ば湖に竜がいるといいねといっていたのに、いつ のまにか竜なんていないというようになったの。 あんなに楽しそうに、竜の話をしてい…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 14 八月末のある日。 むし暑い日でした。 かなは、湖のほとりで、またおじいさんに会い ました。 「暑いのぅ」 そういいながら、おじいさんはかなの横に腰を おろしました。 「ぴゅー、ぴゅぅー」湖の方から、涼…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 13 「知らないおじいさんだけれど、どこのおじい さんかしら。別荘のかたかな」 かなは、おじいさんのことを、みんなに聞いて みました。 「私、白い着物をきたおじいさんなんて、一度 もみたことがないわ」 「ぼ…

竜の姿をみた少女

[童話]竜の姿をみた少女 竜の姿をみた少女 12 おじいさんは、昔をなつかしむように、こども のころの話をしてくれました。 「おじいさん。この村に、竜が住んでいるとい ういいつたえを知っている?」 「ああ、知っているとも」 おじいさんは、大きくうな…