じいじとせみ

[童話]じいじとせみ


    じいじとせみ  7


次の日の夜、じいじはばあば一人に見守られて、遠
い国へ旅立ちました。
そうしきの日にも、「みーん、ミーン、ミーン」と、せみ
がにぎやかに鳴いていました。


あれからニ十年。
じいじからせみをとってもらったぼうやは、この夏、成
人式をむかえました。
「みーん、ミーン、ミーン」
じいじが元気だった時と同じように、松の木でせみが
鳴いています。


青年は、じいじの顔をたった一度しかみたことがあり
ません。
でも、青年はじいじとずっと一緒に暮らしてきたような、
そんな気がするのです。


            おわり