開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


    開善寺の早梅の精  3


村上頼平の家臣に、和歌をよむ風流な男がおりま
した。
男の名前は、埴科文次。
武芸を学ぶかたわら、和歌の道にも精進していま
した。


文次は、出征中にも、心に残る情景があると、そ
れを歌によみました。
文次がよむ歌は、戦に疲れた人々の心を、ほっと
なごませました。
情け深い文次は、みんなから「文次さ、文次さ」と
したわれています。


寒さが厳しい暮れのある日。
「開善寺の梅が、咲いたそうだ。後醍醐天皇によ
って、信濃梅と名づけられた梅の花は、とても美
しい。香りも絶品だ」
文次は、村の人から、開善寺の早梅のことを聞き
ました。


              つづく