井戸で鳴く黄金色のにわとり

[童話]井戸で鳴く黄金色のにわとり


    井戸で鳴く黄金色のにわとり  26


愛するわが子をなくした信廉は、戦をする気力をす
っかりなくしてしまいました。
「わしの一生は、なんだったのだろう。大切なわが子
さえ守ってやることができなかった。戦国の世とはい
え、戦、戦の一生だった。もっとたくさん絵を描きた
かった。歌もたくさんよみたかった」
信廉は、故郷の甲斐の山をみながら、そうつぶやき
ました。


翌月の三月。
信廉は姫の後を追うように、戦死してしまいました。
同じく三月。
武田一族の大将・勝頼が、天目山で自害しました。
そして、武田の一族は、あっけなく滅亡してしまった
のです。


              つづく