開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


    開善寺の早梅の精  5


( 南枝は暖に向かひ北枝は寒し 
一種の春風両般あり)  
   

文次は、梅の花にみとれていました。
ふと気がつくと、目の前に美しい女の人が立っていま
した。


女の人は、いつここへきたのでしょうか。
年のころは、二十才。
いや、もっと若いかもしれません。
清楚な、美しい人でした。
女の人は、紅色の着物の上に白い上着をきています。
「なんて美しい上品な人だろう。梅の精みたいな人だ」
文次は、心の中でそっとつぶやきました。
 
    
              つづく