開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


    開善寺の早梅の精  6


「うわさ通り、美しい花じゃのぅ。香りもすばらしい」
文次は、女の人に話しかけました。
すると、女の人は、にっこりほほえみました。


文次は、即興で歌をよみました。

  ひびきゆく鐘の声さへ匂ふらん

  梅咲く寺の入り相の鐘

「この寺では、鐘の音までも、梅の香りに満ちている」、
こんな意味の歌でした。


すると、女の人は軽く会釈をして、歌を返してきました。

  ながむれば知らぬ昔の匂ひまで

  おもかげ残る庭の梅が枝
 
              つづく