赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


    赤い夕顔の花  34


しかし、犬坊は、その声を無視しました。
「盛永さまは、私ひとりのものだ」
そうさけぶと、犬坊は、盛永の心臓をめがけてさしま
した。
「うーっ」
盛永が、うめき声をあげました。
胸から、血がふきだしました。


「犬坊・・・何をするのじゃ。わしは、誰よりもおまえが
好きだった」
そういうと、盛永は息をひきとりました。
あっけない最後でした。
「私は、この世で一番好きだった人を、やりでさし殺
してしまった」
犬坊は、大声でさけびました。
そして、わぁーと泣きながら、山の奥へ走って行きま
した。


           つづく