赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


    赤い夕顔の花  33


「犬坊。おまえは、この世で一番かわいがってくれた
人に、やりをむける気か。落ち着け、落ち着くのだ。
そんなことをしたら、おまえは一生後悔するぞ」
どこからか、声が聞こえてきました。
「犬坊」
「犬坊や」
盛永の声も聞こえます。


「兄ちゃん、兄ちゃん」
長五郎のかわいい声も聞こえてきました。
「犬坊、何をするの。あなたは、あんなにかわいがっ
てくれた人を、やりでさし殺すつもり。犬坊、そんなこ
とをしてはいけません」
奥がたのお万の声が、どこからか聞こえたような気が
しました。


           つづく