[童話]赤い夕顔の花
赤い夕顔の花 32
「お万さまは、ほんとに幸せなかただ。こんな非常時
にも、盛永さまに思ってもらえるのだから」
犬坊は、母のように慕っていた奥がたのお万に、しっ
としました。
「落ち着け、落ち着くのだ。たかが、寝言ではないか」
犬坊は、自分の心に何度もそういいきかせました。
でも、犬坊は、自分の気持をコントロールすることが
できなくなっていたのです。
「盛永さまは、私ひとりのものだ。奥がたのお万さま
になどわたすものか。長五郎さまにもわたさない。誰
にもわたすものか」
そうさけぶと、犬坊はやりをかまえました。
つづく