海彦山彦

[童話]海彦山彦


    海彦山彦 6


そんなある日。
山彦はまた海へ行き、ぼんやり海をながめていました。
「兄さんは、なぜ大事な剣で作ったつり針を、受け取
ってくれないのだろう。つり針をなくしたことは悪いけ
れど、かわりのつり針を受け取ってくれてもいいじゃ
ないか。兄さんのいじわる」
山彦は、海に向かってつぶやきました。


そこへ、塩椎神(しおつちのかみ)が通りかかりました。
「山彦よ、なにを嘆いているのじゃ」
「私は、兄と道具の取り換えをしました。そして、兄が
大切にしているつり針をなくしてしまったのです。自
分の剣でたくさんのつり針をつくり、許しをこうたので
すが許してくれません。元のつり針でなくてはだめだ
といって、つり針を受け取ってくれないのです」


            つづく