開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


    開善寺の早梅の精  14


梅の花が、月あかりに照らされ美しくみえます。
何事もなかったかのように、梅の花の香りが、あたり
一面にただよっていました。
東の空が、だんだんに明るくなりました。
「ちゅん、ちゅん、ちゅん」
すずめのなき声も聞こえます。


「わしは、夢をみていたのだろうか。美しい上品な女
の人、舌がとけてしまいそうなうまい酒、おいしい料
理。あれは、夢だったのだろうか。いや、夢ではない。
わしは、梅香となのる女の人と、たくさんの歌をよん
だ。ほんとに楽しいひとときだった」
文次は、小声でつぶやきました。

    
              つづく