開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


    開善寺の早梅の精  13


女の人は、文次の寝姿をじっとみていました。


   しきたへの手枕の野の梅ならば

   寝ての朝けの袖に匂はむ


女の人は、「ちぎりをかわす相手が梅の花ならば、翌
朝はとてもよい香りが残っているでしょう」とよんだの
でしょうね。
女の人は歌を読むと、静かに奥へ消えていきました。


どのくらいの時間がすぎたのでしょうか。
文次が目をさますと、美しい女の人も、おいしい酒も、
料理も消えていました。
文次は、一人ぽつんと、梅の木の下に立っていました。

    
              つづく