開善寺の早梅の精

[童話]開善寺の早梅の精


    開善寺の早梅の精  15


すると・・・。
風もないのに、梅の花びらが、ひらひらと文次の上
に舞いおりてきました。
そして、梅の花の香りが、いちだんと強くなりました。


「文次さん。昨夜は、ほんとに楽しかったわ。ありが
とう。来年、梅が咲くころ、ここで会いましょうね。き
っとよ」
どこからか、やさしい声が聞こえてきました。


「あの美しい女の人は、早梅の精だったのかもしれ
ない」 
文次は、そう思いました。
そうです。
文次の前にあらわれた女の人は、月香寮の前に咲
いている早梅の精だったのです。

    
              つづく