鹿になった観音さま

[童話]鹿になった観音さま


    鹿になった観音さま  15


今日限り、鹿狩りをやめます。弓をひくこともやめま
す。観音さま、どうかわしをお許しくださいませ」
三郎は、観音さまの前で許しをこいました。


「さあ、三郎さ。石になってしまったタケルとチハヤ
を、裏山へ迎えにいこう」
和尚と三郎は、裏山へいそぎました。
「三郎さ。タケルとチハヤは、どこじゃ」
「和尚さま、ここです」
大きな杉の木の根元に、犬の形をした二つの石が
ころがっていました。
「タケル、チハヤ。なぜ石になってしまったのじゃ」
和尚は、石になってしまったタケルとチハヤを、何
度もなでました。


            つづく