[童話]赤い夕顔の花
赤い夕顔の花 37
すると、向こうから、下条の兵士が二人歩いてきました。
「おい。今、すれちがった百姓の一家、奥がたと若君
ではないか」
「まさか。奥がたが、あんなうす汚い野良着をきている
はずがない」
「いや、わからんぞ。変装して、城をぬけだしたのかも
しれん」
すれちがった兵士たちの声が聞こえました。
「みつかってしまったかしら」
お万が、心配していいました。
「だいじょうぶです、奥がたさま。奥がたさまが、着古
した野良着を着ているなんて、誰も思いませんから。
さあ、先を急ぎましょう」
つづく