[童話]赤い夕顔の花
赤い夕顔の花 58
その頃。
城主の盛永をやりで刺し殺してしまった犬坊は、むゆ
う病者のようにふらふらと山の中をさまよっていました。
どこをどう歩いたのか、犬坊は思い出せませんでした。
疲れはてた犬坊は、木の切り株に腰をおろしました。
私は、この世で一番好きな盛永さまを、やりで刺し殺
してしまった。
なぜあんなむごいことをしてしまったのだろう。
盛永さまが、「お万。お万は・・・無事か」と寝言をいわ
なかったならば、私は盛永さまを刺し殺すことはなか
っただろう。
つづく