富士山の好きな少女

[童話]富士山の好きな少女


    富士山の好きな少女 4


八月二十日朝。
二人は、うす暗いうちにおきて、たぬき湖へむかいま
した。
昨日はからっと晴れていたのに、今にも雨が降りそう
な天気でした。


二人がたぬき湖へついた時、富士山は厚い黒い雲に
おおわれ、影も形もみえませんでした。
「どうかいい天気になりますように。太陽が顔をだしま
すように」
「このはなさくや姫さま、富士山をみせてください」
二人は、一心に祈りました。


どの位の時間がすぎたのでしょうか。
富士山にかかっていた厚い黒い雲が、何かにひっぱ
られるように、「すぅーっ」と二人の目の前から消えてい
きました。 
 

             つづく