海彦山彦

[童話]海彦山彦


      海彦山彦 20


「兄さん。ただいま」
「山彦、どこへ行っていたのだ」
「兄さんのつり針を探していました。やっとつり針が
みつかりました」
「ほんとうか」
「はい」
「兄さん。つり針を返すので、後を向いてください」
「なぜ後を向くのだ」
海彦は、しぶしぶ後を向きました。


「このつり針は、ぼんやりの針・猛り狂う針・貧しい
針・役立たずの針」
山彦は小声でつぶやきながら、海彦につり針を渡
しました。
「山彦、何をぶつぶついっているのだ」
「何も」
 
 
            つづく