火とぼし山

[童話]火とぼし山


第六章  湖を泳ぐ娘 3


「私には、きよの気持が、よくわかるわ。危険をおかし
てまでも、一分でも早く、大好きな人に会いたいとい
う気持。男のあなたには、わからないでしょうね」
手長がいいました。


「わしにだって、わかるさ。でも、こんな夜中に、湖を
泳いで渡るなんて危険すぎる。深みにはまったら、ど
うするんじゃ。諏訪湖には、深い淵になっている場所
があるからのぅ」
足長が、心配していいました。
「達者な泳ぎだから、深みにでもはまらない限り、大
丈夫でしょ。魚が泳いでいるような、みごとな泳ぎね」
きよの泳ぎをみて、手長が感心したようにいいました。


             つづく