火とぼし山

[童話]火とぼし山


第六章  湖を泳ぐ娘 8


その後。
きよが、次郎の所へたどりつく時間が、だんだんに早
くなりました。
会うたびに、十分二十分と、早くなっていったのです。
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かったね。いつもよ
り早く家をでたの」
ふしぎに思い、次郎が聞きました。
「いつもと同じ時間よ」
きよは、そういいました。


でも、いつもと同じ時間であるはずがない。きよちゃん
は、いつもより早く家をでたのだろうと、次郎は思いま
した。
「きよちゃん。どうやったら、こんなに早くここへこられ
るの」
「私、次郎さんと会う日には、無事に次郎さんの所へ
たどりつけますように。一分でも早く、次郎さんに会え
ますようにと、心の中で祈るの」

 
             つづく