火とぼし山

[童話]火とぼし山


第七章  新しい出発 16


「私の名前は、きよというのですか」
「そうじゃ」
きよは、自分の名前がわからないようでした。
「ここは、どこ」
「わしのやしきじゃ。わしは、諏訪の神・明神じゃ」
「明神さまのやしき? 私は、なぜここにいるの」


「きよ。おまえは、大好きな次郎に会いに行く途中、
小坂観音沖の深い淵で、おぼれてしまったのじゃ」
「次郎さんて、誰」
「おまえが、この世で一番好きな人じゃ」
きよは、大好きだった次郎のこともおぼえていない
ようでした。
「私が、淵でおぼれたのですか」


               つづく