火とぼし山

[童話]火とぼし山


第七章  新しい出発 17


「そうじゃ。大きなうずにまきこまれ、おぼれてしまっ
たのじゃ。手長と足長が、うずの中からおまえを助
けてくれた。おまえは、このやしきで、三日間眠り続
けたのじゃ」
「私は、うずにまきこまれたことも、助けていただいた
ことも、何もおぼえていません」
「そうか。おぼえていないのか」
「ええ、何もおぼえていません」


きよは強いショックを受け、すべての記憶がなくなっ
ているようでした。
記憶がないまま、生まれ育った諏訪で暮らすのもつ
らかろう。
きよが生きていることを知ったら、次郎がまた何かす
るかもしれないし。


               つづく