赤い夕顔の花

[童話]赤い夕顔の花


    赤い夕顔の花  21


「殿様。いつも鹿狩りに行くあの山へ逃げましょう。そ
うすれば、下条の追手から逃げ切ることができます」
盛永と犬坊は、いつも鹿狩りに行く山に向かって逃
げて行きました。


後をふりかえると、城がめらめらと燃えています。
「城が燃えている。さっきまで住んでいた城が燃えて
いる」
盛永が、うわごとのようにいいました。
「あの城は、領民たちの年貢で建てた城。その城が、
燃えている。城は、わしのものだとばかり思っていた。
でも、よく考えてみれば、城は領民たちのものだった
のだ。あの城は、領民たち一人一人の汗の結晶だっ
たのだ。

           つづく