火とぼし山

[童話]火とぼし山


第六章  湖を泳ぐ娘 16


「おらが好きなのは、きよちゃんだけだよ」
次郎はそういったけれど、きよには次郎のことばが白
々しく聞こえました。
「次郎さんのうそつき。次郎さんの心の中には、その
人が住んでいるのに、なぜそんなことをいうの」
きよは、心の中でさけびました。


その日、きよと次郎は、きまずいままで別れました。
こんな別れ方をしたのは、初めてでした。
私は、今でも次郎さんが大好き。
でも、次郎さんの心の中には、私以外の人が住んで
いる。

  
             つづく