火とぼし山

[童話]火とぼし山


第三章  湖の上を歩く娘 3


無事に湖をわたりおえた娘は、裏山に向かって歩
き始めました。
娘は、急な坂道をどんどん登って行きます。
「なんて足のはやい娘だろう」
明神さまは、小声でつぶやきました。


「次郎さん、こんばんは」
「きよちゃん。今夜は、ずいぶん早かったね」
「私、湖の上を歩いてきたの」
「えっ、湖の氷の上を?」
次郎が驚いて聞きました。
「一分でも早く、次郎さんに会いたかったから」
「きよちゃん。湖の氷は、まだ薄い。氷が割れたら、
どうするの。こんな寒い夜、湖に落ちたら死んでし
まうよ。頼むから、危険なことはしないでね」
次郎は、きよのことが心配でした。


             つづく