火とぼし山

[童話]火とぼし山


第三章  湖の上を歩く娘 5


「ほんとに仲のいいカップルじゃのぅ。みていても、
うらやましいくらいじゃ。娘の名前は、きよ。青年
の名前は、次郎というのか。やさしそうな、感じの
いい娘じゃのぅ。娘のあのうれしそうな顔。なんて
すてきな笑顔だろう」
娘をみとどけ安心した明神さまは、下諏訪の奥さ
んのやしきへいそぎました。


「ただいま」
「おかえりなさい。遅いから心配していたのよ」
奥さんが、ほっとした顔でいいました。
「ここへくる途中、湖の氷の上で、娘に会ってのぅ」
「娘さんに?」


             つづく